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第283話
「こんにちは煌騎くん、やはりここにいましたね」
あれから数日、俺はまた中庭で加住に遭遇した。まるで探していたと言いたげなその言葉 に、疑問が浮かび首を傾げる。
健吾からは既にチィの中から俺に関しての記憶は、すべて封印できたと報告は受けていた。
施術後も順調だと言っていたし何の問題もないと思っていたのだが、今になって何か副作用的なものが出始めたのかと不安が頭を過ぎる。
しかし加住はそうではないと静かに首を横に振った。
「チィさんの経過は至って良好ですので、どうかご安心ください」
「ならなんだ、俺に用でもあるのか」
「つれないですね、私たちは秘密を共有するほどの仲なのに……。まぁそこがアナタの魅力のひとつでもあるのですが、フフッ」
わざと含みを持たせるように言う加住に、俺はますます眉間に皺を寄せて訝しむ。
―――この男、何が言いたい……?
確かにこの治療法は当事者であるチィや和之にも伏せていたが、病院側はもちろんチィの保護者である健吾だって知っている。
それをこいつは敢えて『2人の秘密』と匂わせる発言をし、あたかも俺たちが親密な関係だと示唆した。
その意図が読めず無言のまま奴の言葉を推し量っていると、加住はクスクスと楽しそうに笑い近くのベンチへと座る。
そして目線だけで俺も隣へ腰掛けるよう促し、それに従うまでは話さないという姿勢を貫き通した。
チィの主治医でなければ無視しているところだが、こいつがすべての権限を握っているため無碍にはできず渋々それに従う。
「……それで? さっさと要件を言えッ」
「もちろんチィさんのことですよ。この間の施術のことでご報告がありまして」
「その事ならもう健吾から聞いている。無事に俺の記憶を封印できたとッ―――…」
「そうですね、でも正確には1部チィさんのアナタへの想いを和之さんに書き換えさせて頂きました」
「―――はっ!? どういう……ことだ、それは……」
予め聞いた内容と異なることに俺は少なからず驚きが隠せなかった。それにそんなことをする意味も分からない。
あの2人はそんな小細工などせずとも、自然と惹かれ合い結ばれる筈だった。和之の包容力をもってすればチィが惹かれない訳がなかったのだ。
それなのに何故……ッ!?
言葉こそ荒らげはしなかったが、俺は加住に詰め寄る勢いで問いただす。
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