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第292話
今まで煌騎はよくこれに堪えてきたなと内心、あいつの忍耐力の強さに感心してしまった。
あの2人は未だ肉体関係にはない、それは見ていて分かる。チィは全面的に煌騎を信頼を寄せていて、疑うことすらないように見受けられた。
その役目をこれからは俺が引き継がなければならないのだ。目の前の試練に思わず苦笑が漏れるが、けれどもなんと贅沢な悩みだと嬉しさも同時に込み上げた。
「それにしてもチィは相変わらず骨と皮だけだな、もっと栄養のあるものを沢山食べさせなて肉を付けないと……」
「…………う……?」
スポンジにボデイーソープをつけてたっぷり泡立て、丁寧に身体を洗ってやる。だが俺よりも遥かに洗う面積が少ない彼に、もっと太らせねばという妙な使命感が芽生えてならない。
これは俺が飯を作る側の人間だがら抱く感情か……?
そう考えて俺は心の中で首を横に振る。もう自分の気持ちにはとっくに気がついていた。止めようとしても勝手に溢れ出てくるこの感情は、恋愛感情に他ならない。
ただ彼には庇護欲も掻き立てられるので、少し俺の中で混乱が生じた。守りたいという純粋な気持ちを勘違いしているのではと、何度も自問自答を繰り返したが最後に行き着くのはいつもチィへの執着だった。
右手にスポンジを持ち彼の身体を洗いながら、添えた左の手が胸の小さな飾りのひとつを掠める。するとチィの口から甘い声が洩れて堪らなくなった。
「ここ、弄られるの……好き?」
「ん、あっ……分かんない。でも和之さんの手、あったかくて気持ちぃ……」
「そう、可愛いよチィ」
指の腹でその小さな粒をコロコロと転がし、時折人差し指と中指で挟んではクリクリと刺激する。それだけでそこはぷっくりと膨れて尖り、ツンと俺を煽っているかのように赤く色付いてきた。
ゴクリと生唾を飲み込んでふつふつと湧き上がる激情をなんとか堪える。今すぐそこへむしゃぶりつきたいが今は生憎と泡まみれだし、彼との事は暫く様子を見ると決めたばかりだ。
ここで手を出せば加住とかいう男の思惑通りになったようで嫌だった。それに煌騎のように俺も誠意を見せたかった。自分の気持ちが本物であると……。
そう思うのに俺の手はそ こ を刺激するのを止められない。
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