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第303話
穏やかじゃない空気に何だか息がし難いなと思っていたら、気づいた時には既に呼吸自体が荒くなりもう自分では制御できず手脚の痺れも出始めていた。
このままではヤバいというのは何となく今までの経験上は分かっているのに、前にいる和之さんに声を掛けることすらできない。
助けを求めるように目の前の香住センセを見るけれど彼は変わらずニコニコとし、まるでボクのその症状を観察でもするかのような眼差しで静観し続けていた。
もうダメだと意識が遠のき掛けた時、校舎にけたたましいバイクの騒音が響いたかと思うと近くに停車し、誰かがこちらに駆け寄ってくる気配がする。
力が抜けて自力では立っていられなくなって崩れ落ちる間際、ボクの身体は後ろからその誰かに受け止められた。
「―――和之ッ、何をしている!!」
「え、煌騎ッ!?あっ、チィどうしッ――…」
「あれ程チィから目を離すなと言っておいたのに……チッ、今はこいつに構うな! 行くぞッ!!」
颯爽と現れた彼はボクを軽々と横抱きにすると香住センセをひと睨みし、踵を返すと自分の乗ってきたバイクは流星くんに頼みあとに残る和之さんらを引き連れて、校舎に向かって歩み始めた。
それを対峙する香住センセは黙って見守っていたが、何かを思い出したようにクスリと笑うとボクに声を掛ける。
「チィさん《空は青い》ですか? 今も昔も空はそこにあるもの、いつでもアナタを見下ろしていますよ」
そう意味不明な言葉を投げ掛けたあと、彼も此処にはもう用はないとばかりに踵を返し、未練なくその場を立ち去っていく。
ボクは何を言われたのかも分からないまま、その後ろ姿を見つめながら彼の言葉だけが頭に残り、気を失うまでの数分間それを延々とリフレインさせたのだった……。
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