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第307話

「神埼の件はとりあえず優心と雪に任せるが、虎汰と流星は引き続きチィの護衛を頼みたい。香住が学園に現れた以上、無視はできないからな」 白銀さんはそう言うとこの話は終いだと、半ば強制的に話し合いを終わらせた。恐らくこの場にボクがいるからだろう。彼らは基本、ボクのいる前ではあまりチーム関係の話をしない。 それは無関係の人間をチームのいざこざに巻き込む事を、なるべく避ける為でもあると以前教わったのでそれに関しては別に不快にはならなかった。 虎汰もほんの少しだけ不満そうだったけど、向かいでそんな彼を励ますようにジェスチャーで伝えるボクの姿を見て目尻が下がり、二ヘラと笑って何とか機嫌を直す。 「香住の話をすべて鵜呑みにするワケじゃないが、100%それが嘘だという確証も今の所はないからな。もしかしたら本当にあいつの言う通り偶然なのかもしれないし、暫くは様子見でいいと思う」 「和之お前なぁッ、いつからそんな悠長なことを言うようになったんだよ!?」 その場を取り繕うように和之さんがフォローを入れたつもりだったようだけど、朔夜さんは今度は彼に噛み付いた。 いつもならある程度の予測を立て、不測の事態に陥っても大丈夫なように前もって行動していたと、和之さんを強く非難する。 そのトゲのある言い方にまたも険悪な空気になるが、しかし和之さんは困ったような顔付きで宥めるように彼を見つめ、“そうだな、今の発言は軽率だった”と謝っただけだった。 すると朔夜さんはバツが悪そうに顔を歪め、頭を冷やしてくると外へ出ていってしまう。ボクは彼の事が心配でひとりあわあわとするが、虎子ちゃんは大丈夫だからと宥めてくれた。 「少し朔夜と話してくる」 彼のあとを追って白銀さんが部屋を出ていき、この空間に静けさが戻る。 あれほど仲の良かった彼らがボクの記憶を失った事をきっかけにして、こうも容易くギクシャクしているのが見ていてとても辛かった。 すべてボクのせいだ……。 簡単に記憶を忘れちゃったりしたからイライラが募り、彼らの間に溝が生じて問題を起こさせているんだと思う。 申し訳ない気持ちで俯いていると、虎子ちゃんがまたボクを抱き締めて背中をトントンしてくれた。

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