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第314話
「チィは俺らにとって太陽のような存在なんだ。傍にいるだけで心が温まるし、キミが笑ってくれればとても癒される。チームなんかに所属しているとね、どうしても神経を剃り減らすことが多いんだ……」
そう言って和之さんはまた苦笑いを浮かべた。
彼らの世界は独特でチーム同士のいざこざや小競り合い、他県からの干渉、衝突などが頻繁に起こり休まる時がない。
だからボクみたいな和む存在が必要なのだと彼は話してくれた。
「だからチィは気兼ねなく此処にいていいんだよ? っていうか俺らがもうチィを離さないから、覚悟しててね」
「あぅっ、んとんと……こちら…こそ、ふつつか者デス…が……えと、よろしくお願いしま……す?」
「ふふ、何それ? チィそんな言葉どこで覚えたの」
スゴく可笑しそうに笑う和之さんに、アレ間違えたかな?とボクは首を傾げる。この前観たテレビのドラマで、女の人がこれからお世話になる男の人に対してこう言っていたのだ。
ボクもお世話になってる身なので是非とも言っておかなければと思って、それが念願叶って今日やっと言えてホッとする。
「もしかしてまたテレビの影響? チィの観るものってチョイスがいつも渋いよね、今どき『ふつつか者ですが』なんてセリフ聞いたことないよ」
「う? テレビは健吾さんと一緒に観るの。お隣で健吾さんいつも泣いてるからヨシヨシしてあげてる」
「あははっ、なんだチィ健吾さんに付き合わされて観てたの? あの人昭和のドラマとか好きだからなぁ」
涙を浮かべながら笑う和之さんに、何が可笑しいのだろうとボクはコテンと小首を傾げた。
最近確かに健吾さんは頻繁に倉庫に遊びに来ては、ボクに社会勉強の一環としてドラマを一緒に観ることを強要してたけど、あれは古い作品だったのだろうか?
よく分からない……。
和之さんは尚も笑いながら、健吾さんはボクを古き良き時代の大和撫子に育て上げようとしてるんじゃないかと言う。
ボクがそ れ になったらみんな喜ぶ? って聞いたら、和之さんの笑いが更に止まらなくなってボクの頭にはハテナマークがいっぱい飛び交ったのだった。
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