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第316話
所在なげに部屋を見渡していた彼にボクがベッドの近くへ座るよう勧めると、白銀さんはようやくそこへ腰を落ち着ける。
そしてこうなった経緯を言葉少なめにだけど教えてくれた。どうやら白鷲は以前から隣街の大きなチームと小競り合いが続いていたらしく、それが昨日の夕方から何故か雲行きが怪しくなってきているのだそうだ。
しかし今の段階でチームのトップである彼が動けば事態が更に悪化しかねない為、今回は全て和之さんに任せる事になったらしい。
と言ってもそれは建前だけで、基本ツートップは動かないのがこのチームの鉄則だから、和之さんが拘束されるのは今だけ……。
今日中には解放される予定なので唯一この時間帯に暇を持て余している白銀さんに、ボクの世話の役目が割り振られたとのことだった。
それも学校に偵察に出ている虎汰と虎子ちゃんが戻ってくるまでの間だけだという。
「じゃあ2人が帰ってきたら白銀さん、また何処かに行っちゃうの?」
「ん、まぁ……俺も夕方から用事があるからな」
「……そう…なんだ……」
彼と2人きりなのは緊張するけど、それはそれで何だか寂しい気がした。だからボクはほんのちょびっとだけしょんぼりしてしまう。
今までは必要以上に彼を怖がって避けてしまっていたから、いい機会だと思っていたのにあまり長くは一緒にいられないなんて……。
残念な気持ちで彼の顔を見つめると、白銀さんは困った表情を浮かべて苦笑いする。それから宥めるようにボクの頭を優しく撫でた。
「そんな顔するな、傍にずっといてやりたくなる」
そう言って彼の温かい手は直ぐに引っ込んでしまう。それがとても名残惜しく感じてしまった。ボクの1番は和之さんのハズなのにどうして……?
気が動転したボクは何かの気の迷いだと頭をブンブンと振り、健吾さんのお土産のパズルゲームを白銀さんに手渡しお手本を見せてと話をすり替えてみた。
このままでは頭を撫でて貰うよう自ら強請ってしまいそうだったから……。
「これ、健吾 が買ってきたのか?」
「う? うん、ダメ……?」
「いや、ダメとかじゃなく……まぁ、お前がいいならいいか」
白銀さんはひとり納得するとボクの手から玩具を受け取り、ものの1分でパズルを完成させてしまった。
あまりの早業にボクは思わず叫んでしまう。
「―――なんでッ!? どしてそんな早いのッ!?」
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