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第320話〜甘い匂いに誘われて〜

次の日にはボクも元気を取り戻し、健吾さんにも許可を貰えたので晴れて学校に行ける事となった。 驚いたことに支度を整え表に出るとそこには虎汰たちの他に白銀さんもいて、今日からまた通常通り一緒の車に乗って登校することにしたという。 内心では少し喜んでニコニコしていると、双子がボクの両サイドを挟んで耳に顔を近づけてくる。 「良かったな、チィ!」 「また煌騎くんと一緒に登校できるわね、嬉しい?」 「虎汰、虎子ちゃん……う、うん……」 言い当てられて恥ずかしい気持ちになり、真っ赤になった顔を誰にも見られたくなくて俯く。でも双子は遠慮なしにそんなボクをからかってくるので困った。 「チィはホント可愛いなぁっ、照れちゃってぇ」 「ふふ、真っ赤になったチィのほっぺはいちご大福みたいで美味しそう! 食べちゃいたいわ♪」 「たっ、食べちゃダメなのぉっ、きゃああぁ! 和之さん助けてぇ~!」 本気でボクのほっぺを食べようとする2人から逃れようと、近くにいる彼に助けを求めた。すると和之さんは呆れつつも双子を窘め、見事ボクを救出してくれる。 そして病み上がりのボクを気遣ってかしっかりと腰を抱いて身体を密着させ、みんなが集まる所まで連れていってくれた。 虎汰も虎子ちゃんもニコニコしながら後をついてきて、停車した車の近くで話し込む朔夜さんと流星くんに白銀さんもこちらを振り向いてクスリと笑う。 その眼差しがとっても温かくて、ボクはみんなにこうして見守られてるんだなって実感して嬉しくなった。 「何やってんだ、お前ら……」 「だぁってチィのほっぺが本当に美味しそうだったんだもん、なぁ虎子?」 「可愛いほっぺをしてるチィが悪いのよ、ねぇ虎汰」 流星くんがふざけ続ける2人を窘めようと口を開くけど、双子は結託して悪いのはボクのせいにする。 もちろん彼らが本気じゃないのはみんなも分かっているから怒りはしないが、ボクが気にするのではと心配した流星くんが双子の頭に拳骨を落とした。 「いい加減にしろっ、チィが可愛いのは罪なんかじゃないだろ!」 「プッ、流星よくそんなクサイ台詞が吐けるな」 「――――なッ!?」 虎汰に指摘されて無自覚だったのか、流星くんが途端に顔を真っ赤にさせ手のひらで口元を覆う。 それを見た双子は顔を見合わせてニヤリと笑うと、今度は彼をターゲットにしてからかい出したのだった。

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