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第321話
車中では白銀さんはボクの隣に腰掛けていた。
そこは彼の指定席らしく最初はボクに遠慮して違う席に座ろうとしていたのだけど、和之さんがそこまでする必要はないんじゃないのかと提案した為いつもの席に腰を下ろしたのだ。
先程から虎子ちゃんの視線が妙に痛い……。
彼女はニコニコと笑って期待の眼差しをボクに向けてくる。これは後から虎汰に聞いたのだけど虎子ちゃんは実は少女漫画が大好きで、こういうイケメン2人に取り合いをされる設定が何よりも好きなのだそうだ。
それを聞いて直ぐさま『ボク和之さんや白銀さんに取り合いされてないよ?』と彼に抗議したけど、虎子ちゃんの頭の中ではそうなってるらしく、本人も妄想として楽しんでやってるのでそっとしておいてやってくれと言われた。
そうこうしてる間に車はいつも通り学校の校舎前に到着し、虎汰たちが順番に降りていく。
今日は朔夜さんと白銀さんが共に降りていったので、それに違和感を感じた以外は他に変化はなかった。
「やっぱ今日は来てないか」
車から降りて直ぐ、虎汰が辺りを窺いながらポツリと呟く。彼が気にしてるのは香住センセのことかな?
すると横から流星くんが並び、ポケットに手を突っ込んでぶっきらぼうに答えた。
「まぁ一応あいつも養護教諭の立場だからな。1人の生徒を特別扱いはできないんだろ」
「だったら初日も来んなっつー話だろ!」
「まぁそんな話は後でいいだろ、それよりこれ以上人が集まる前に校舎に入るぞ!」
2人の会話を聞いていた和之さんが周りを警戒しつつも窘める。途端顔を引き締めた虎汰と流星くんはこちらまで近寄るとボクの壁となり、白銀さんも朔夜さんも周りに並行して歩き始めた。
当然女の子たちはそれに伴ってキャーキャーと歓声を上げたが、中にはボクの中傷の声も混じっている。
その度に流星くんや虎汰が脚を止めるからなかなか進まず、朔夜さんがいちいち相手をするなと2人を否して校舎内を目指した。
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