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第324話
ボクは間食をすると夕飯が食べられなくなるから、和之さんには絶対に買い食いはしちゃダメって言われてたというのに……。
目の前で美味しそうに食べてた2人の顔を思い出すと、その時の悲しい気持ちが蘇ってきた。
なのでジト目で振り返れば、虎汰も流星くんもちょっとだけ気まずそうな顔をする。でも開き直ったのか2人はあははと笑って誤魔化そうとした。
そんなことがあったと初めて知った虎子ちゃんは、ボクに代わって2人に鉄拳を食らわせ成敗してくれたけど、お店閉めちゃったのならあの店のホットドッグはもう2度と食べれない。
そう思うと少し残念な気持ちは拭えなかった。
そしたら和之さんが隣にきて、労わるようにボクの頭をヨシヨシしてくれる。
「ごめんよチィ、まさかあの店がこんなに早く店じまいすると思わなくて……。今度の休みの日にお昼はあそこで食べようって誘おうと思ってたんだ」
「う……ううん、仕方ないよ。だってボク、直ぐお腹いっぱいなっちゃうもん」
和之さんはボクの身体のことを思って言ってくれたんだから、我儘は言えないし我慢しなくちゃいけないと思った。
これ以上暗い顔してたら気にするから、ボクはなるべく明るく振る舞ってニッコリ笑う。それが却って和之さんの罪悪感を生み、彼の眉はどんどんと下がっていった。
「あの、ホントにだいじょぶだから気にしないで?」
「でも……あ、それじゃ今日のお昼はホットドッグにしようか! 今から倉庫に帰って作ってくるよ、ね?」
名案とばかりに和之さんがそう言う。だけどボクは申し訳なくて顔をブンブンと横に振った。せっかく学校に来たばかりなのに、そんな手間を掛けさせるワケにはいかない。
助けを求めるように後ろを振り返れば虎汰や流星くん、虎子ちゃんも大はしゃぎでそれに賛同した。
「それスゴくいいアイデア! 和之さんの作るお弁当はどれも美味しいけど、青空の下で食べるホットドッグも美味しそう♪」
「そうだなっ! ちょっとしたピクニック気分も味わえるし♪」
「え……あの、待って……でもっ」
戸惑ってる間に話は瞬く間に決まり、和之さんは白銀さんに許可を得て屋上をさっさと降りていってしまい、残されたボクは呆然としてしまう。
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