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第327話〜記憶の片隅にある幼馴染み〜
『ねぇチィちゃん、こっちのほうにカワイイお花がいっぱいあるよぉ』
『あ、ホントだぁ! さすがアイちゃん、見つけるの上手だねぇ♪』
大きなお庭で親の目を盗み、母親が大切にしている花壇からお花を摘む顔が瓜二つな男女の子供……。
チィちゃんと呼ばれてるのはたぶんボクだ。そしてアイちゃんと呼んでるのは、ボクが空想の世界で創り出した夢の中の妹……。
ということはこれはいつもの夢だろうか?
だとしたら久しぶりに見た気がする。この夢はあまりに幸せ過ぎて、ボクには耐えられなかったから意識して見ないようにしていた。
あれ、でも何で幸せだと辛かったんだろう。
それに夢にしてはやけにリアル過ぎないだろうか?
まるで過去に体験したことがあるような錯覚を起こさせる夢に、ボクは少なからず戸惑った。
しかしそ れ は夢のハズなのに、見てるボクの意思を無視して先へと進む。
『そうだ、チィちゃん今日おウチに新しいお友だちが遊びにくるんだって!』
『わぁっ、男の子かな女の子かなぁ? 楽しみだねぇアイちゃん♪』
『うんっ、ホント楽しみ~♪』
キャッキャと騒ぐボクたちは午後からウチに遊びに来る、父親のお友だちの子供が男の子か女の子かで大いに盛り上がった。
それから暫くして母親に呼ばれ、家の中へと入ったボクたちは仲良く洗面所で手を洗い、リビングへと向かう。
そこにはソファに座るボクたちの父親と、対面する席にこちらに背を向けた男性の後ろ姿があった。
その男性の隣には小さい頭がぴょこっと覗かせていて、自分たちと年が近いのだろうなと期待を否応なしに膨らませる。
『お、戻ってきたようだな。〇〇紹介するよ、ウチの子たちだ』
『はじめまして、わたし愛音って言うの! よろしくね』
『あの、えと……ボクは千 影 って言います。んと……よろしく…デス』
父親に促されてボクたち兄妹はお客さんに元気よく挨拶をした。でもボクの空想上の妹、“愛音”って言うんだ。初めて知ったかもしれない、これって偶然?
白銀さんの彼女も確か愛音さん……ってアレ、ちょっと待って!? いまボク自分のお名前、千影って言った―――…!?
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