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第328話
ワケが分からず呆然としていると、父親のお友だちとその子供の顔がこちら側を振り返る。だがそれにもまた驚愕した。
父親と並んだそのお友だちも顔が瓜二つだったのだ。しかもその隣に並ぶ子もボクたちにそっくり……。
驚いているのは向 こ う のボクたちも一緒のようで、口を開けてポカンとする。すると父親は悪戯が成功した時のようにクスクスと笑い、隣の男性の肩を抱きながら説明をしてくれた。
『ふふ、千影も愛音もやはり驚いたな。こいつは父さんの双子の弟なんだ。そのせいかどうかは分からないけど、こいつの子の咲 ちゃんもお前たちに似てると思わないか?』
『う?……咲…ちゃん?』
新たな名前にボクが首を傾げると、ボクらの前に立つ少女が不機嫌なのを隠しもしないでこちらを見る。
けれど自分の父親に促され、仕方なくといった感じで頭を下げ自己紹介をした。
『はじめまして、咲です』
『ウチの咲は愛音ちゃんと同い年だよ。ちょっと人見知りが激しいんだけど2人とも仲良くしてやってね』
『『うんっ、分かった♪』』
咲ちゃんの声は鈴の音のように透き通ってて、すっごくキレイな子だった。外見もボクの妹にとてもよく似ていて、双子に間違われるボクら兄妹よりもこちらとのほうが信じて貰えそうなほどだ。
でも決定的に違うところがひとつあった。咲ちゃんは底冷えするほどに人を拒絶する眼……。
この瞳をボクは何処かで見たような気がした。
『今日はあいつも後からウチに来ることになってるんだ』
『おっ、ならコウくんも一緒に来るのかな? ウチの娘は彼が大好きだから喜ぶよ』
『そうなのか? 流石はお前の子だな、ウチの愛音なんか未だにお兄ちゃん大好きで離れようともしないよ』
父親たちがそう会話して、それでようやくボクは思い出せた。この夢の中の妹はボクが大好きで何処に行くのも一緒、少しでも姿が見えなくなると泣いて「お兄ちゃん何処?」と探してくれる。
ボクにとって彼女はとても可愛くて大切な存在だった。――あぁ、そうか。だからこの夢を見なくなったんだ。
愛しいと思える妹にもう二 度 と 会うことができなくなったから……。
この先は見たくない。悲しい結末が待ってる夢なんか、もう木っ端微塵に消してしまいたかった。
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