329 / 405
第329話
そう思うのに目の前の咲ちゃんはパァッと華が咲いたように微笑んで、ボクたちを完全に無視し父親たちの会話に無理やり入り込む。
『ねぇねぇお父さん、私の大好きなコウちゃんが来るって本当?』
『ん? あぁ、本当らしいな。それまで咲は千影くんたちと2階で遊んできたらどうだ』
『え~っ、イヤよ! だってこの子たち私の顔に似てて気持ち悪いんだもん!』
子供特有の思ったことを口に出して言う口調で、彼女はボクたちをはっきりと拒絶した。
けれど咲ちゃんの父親はそれを咎めるでもなく、仕方がないなぁと彼女を抱っこしてソファに戻っていく。
ボクらの父親は小声で「ごめんね、咲ちゃんはまだ小さいから許してあげて」とフォローし、優しく2人の頭を撫でてくれ一緒にソファに座るよう促してくれた。
本当は行きたくなかったけど、テーブルには大好きな母親手作りのカットされたパウンドケーキが並んでいて、それに釣られてソファに座ってしまう。
ボクがそこに座ったから妹も座ざるを得なくて、渋々とだけどついてきて隣に座った。
だけどやっぱりその空間は全然楽しくなくて、暫くして飽きてしまったボクは妹にも気付かれずに、こっそりリビングから抜け出してしまう。
ひとりお庭に戻ってきたボクは真っ白な子猫を見つけ、一頻り遊んだあと眠くなって眠ってしまった。
昨夜は母親に遅くまで何かの作業に付き合わされた為、眠くて眠くて仕方がない。誰かがボクの身体を揺り動かすまで熟睡してしまった。
そして目を開けるとそこにはボクよりも少し大きな男の子が立っていて、心配そうにこちらを見下ろしてくる。
『………お兄ちゃ……だーれ?』
『おれは煌騎! でも皆は"コウちゃん”って呼んでる。それよりお外で寝ちゃダメだろ? 父さんたちが探してるからおウチの中に戻ろ』
男の子はそう言うとボクの手を取り、軽く引き寄せて立たせようとした。けどまだ中に戻りたくなかった小さなボクは、首をプルプル横に振ってそれを拒む。
それから先程見つけた子猫の話しをして、2人で探検に出ることにしたんだ。
途中迷子になったり半泣きになったりしたけど、ボクたちは無事に家へと戻り心配した父親からたくさんお説教を受けたのだった。
―――ここから先はもう見たくない……。
ともだちにシェアしよう!

