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第330話
おウチに入ったら何故か叔父さんと咲ちゃん、それに妹の姿がなかった。聞けば咲ちゃんたちは急用とかでコウちゃんたち親子が来る前に帰り、妹の愛音も母親と買い物に出掛けたという。
何でもボクがいつの間にかいなくなっていたから妹は大泣きしたらしく、仕方がないので気晴らしに外へ連れ出したんだそうだ。
『愛音を泣き止ますの、ホント大変だったんだぞ?』
『はうぅ、ごめん…なさい……』
愚痴るように言う父親にボクは反省の気持ちを込めて謝る。すると父は冗談だと言って豪快に笑い、今後は黙って出歩かないと約束するならと許してくれた。
それを聞いてボクはコクコクと大袈裟なほど頷いて見せ、父親もにこやかに微笑んでくれる。そこへコウちゃんのお父さんだという男の人が、首を傾げながら聞いてきた。
『あれ、その子が愛音ちゃんじゃないのか?』
『ん? あぁ、この子は上の子の千影だよ』
『なんだ、俺はてっきりお前の子はひとりだと思ってたよ。マズイな、コウにもそう教えてしまったから千影くんのこと愛音ちゃんだと思い込んでるぞ』
コウちゃんのお父さんは困ったと言いながら、ポリポリと頭を掻く。
でもそれを聞いたボクの父親は、何やら悪戯を思いついたのか含み笑いを浮かべた。
その瞬間コウちゃんのお父さんは……、
『はぁ、また始まった。お前のその悪い癖、ホントどうにかならないか……』
『ふふ、面白そうじゃないか。コウくんがいつ頃、千影が愛音じゃないと気づくか……賭けないか?』
父親の提案に苦笑いを浮かべる。それでも結局はその賭けに乗り、2人して期間を議論し始めた。
自分が賭けの対象にされているとも知らず、ボクはお客さまであるコウちゃんたちにジュースを容れてあげようと、台所に向かい冷蔵庫を開ける。
『あっ、千影いまから父さんたち溜まり場に行くぞ』
『う? んと……ボクも、行っていいの?』
『あぁ、いいよ。子連れの奴も呼んでるからお友だちがいっぱいできるかもな!』
父親が突然なんの前触れもなく出掛けると言い出し、ボクも連れて行ってくれると言う。
隣を見ればコウちゃんは前もって聞いていたのか、驚いた様子はなかった。
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