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第331話
父親の言う溜まり場とは昔、帰る場所がない仲間の為にボクの祖父に当たる人が所有する倉庫を勝手に改造し、皆で寛げる家を作ったらしく今でもそこに昔の仲間が集うのだそうだ。
そんな素敵な場所を見てみたいと以前から思っていたボクは、ひとりワクワクとしていた。
この後にあんな事が起こるとも知らずに……。
コウちゃんのお父さんが運転する車で移動し、父親の言う溜まり場に着いたボクたちは怖いお兄さんにたくさん囲まれた。
普段は人見知りほどではなかったボクも、流石に怖いお顔のお兄さんたちに萎縮してしまい父親の背後に隠れてしまう。
するとコウちゃんのお父さんがこっそりとボクをそこから連れ出してくれ、総長のお部屋というところへ一時避難した。
『怖い顔した連中に囲まれて千影くんびっくりしただろ、ごめんな? でもあいつら顔はあんなだけど根はいい奴ばっかだから仲良くしてやってよ、な?』
『うぅ……ボク、がんばりますっ』
手を繋ぎお話をしながら2階に上がり細い廊下を行った先に扉があって、中に入るとウチよりも広いリビングのようなお部屋になっていて驚く。
その奥にも更に扉があって、その前でボクたちは1度立ち止まった。そしてコウちゃんのお父さんはズボンのポケットから、緑と紫の色をした石が付いたカギを取り出す。
それを使って鍵を開けるとノブを回し中へと入れてくれた。そのお部屋も外の外観とは掛け離れた創りになっていて、暫くここで休んでいてもいいと言う。
みんなと仲良くできそうになったら下に降りておいでと言い残し、コウちゃんのお父さんは部屋から出ていった。
ひとり取り残されたボクは、まだドキドキするお胸の前の服をぎゅっと掴みふぅっと息を吐く。
今回初めて大人が大勢いる場に連れて来られて、軽くカルチャーショックを受けていた。如何に自分が狭い世界で生きて来たかを知る。
来年は小学校に入学しなければいけないのに、これではダメだと自身を奮い立たせるが先ほど見たお兄さんたちのお顔を思い出すと、その意気込みもしゅるしゅると縮んでしまう。
『明日はボクのお祖父ちゃんにも初めて会いにいくのに、ボクほんと弱虫……』
ボクは今まで父親の身内には1度も会ったことがなかった。けどもう小学校に上がるのだからと、明日会わせてくれることになっていたのだ。
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