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第332話

今日父親の弟だという叔父さんにも初めて会って、ボクは改めて自分の父親のことを何も知らないのだと知った。 車で移動中もいずれ父親はお祖父ちゃんの家業を継がなければならないということも話してくれ、ボクもゆくゆくはそれを引き継ぐという。 でも気の弱いボクには難しい家業だから、無理に継ぐ必要はないと言ってくれる。下に妹がいるし、いざとなったら妹と結婚した人に継いで貰うと……。 何の家業なのかはまだ教えてはくれなかったけど、ボクみたいな優し過ぎる子には向いてない家業だとだけ言われた。 ボクが不甲斐ないばかりに大切な妹にまで迷惑が掛かる。そんなのはイヤだから、今の内にこの臆病な心を直そうと思った矢先の事だったので、ボクの落ち込み様は酷かった。 と、暫くしてこの部屋のドアをノックする音が聞こえる。誰だろうと一瞬ビクッとしたが、ボクがここにいることを知っているのはコウちゃんのお父さんしか知らない……。 父親が心配して見に来てくれたのかなと思ったボクは、躊躇いながらもドアをゆっくりと開けた。 『あ、やっぱりここにいた。父さんがこの部屋に行けっていうから来たけど、どうしたの具合悪い?』 そう言って部屋の前にいたのはコウちゃんだった。心配そうにボクの顔色を伺ってくれる。恥ずかしくて本当の理由は言えなかったから、ごにょごにょと言い訳して俯いてしまった。 すると彼は言葉を濁したのにクスクスと笑い、気にした風もなく流してくれる。 『ねぇ、下に行こうよ! お菓子もいっぱいあるし、おれたちと年の近い子たちもいるよっ』 『う? そなの?』 てっきりあの怖いお兄さんたちばかりがいると思っていたが、どうやらボクみたいな小さい子もいるらしい。 それを聞いたボクはキラキラと目を輝かせ、コウちゃんのお顔を見上げた。 『ふふ、さっき双子も見かけたよ! 双子って見たことある? おれは初めて見たから驚いた!』 『ボクのお父さん双子だった。今日初めて知ったの』 『ホントッ!? 今度並んでいるところ見たいなっ』 そんな話をしていたら下に行くのがいつの間にか怖くなくなって、ボクはコウちゃんに手を引かれて下の階に降りていったのだった。

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