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第337話
それが憔悴しきった様子に見えコウちゃんのお父さんは肩を竦ませると首を横に振り、気にするなとだけ声を掛け頭を上げさせる。
それを聞いた叔父さんはすんなりと顔を上げて照れたように笑い、待ち合わせに指定された場所まで案内すると言って歩き出した。
その後を一応ボクもついていく。叔父さんには車で待つよう言われたのだけど、コウちゃんのお父さんが念のため途中まで連れて行くと言う。
足でまといになると叔父さんは渋い顔をしたけど、彼は譲らなかった。親友に託された子だから自分の手で守りたいと、そう言ってくれる。
その代わりボクには離れている間はちゃんと叔父さんの言う事を聞くよう、口を酸っぱくなるほど言い聞かせた。
『―――咲ッ!!』
大なり小なり錆びついた元は銀色のパイプが幾つも連なる小道を行った先に、少し拓けた場所がある。
そこには既に数人の黒いスーツを纏った男たちがいて、中央には咲ちゃんが拘束され今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。
『オジ様ッ、やっぱり私を助けにきてくれたのね!』
咲ちゃんは真っ先にコウちゃんのお父さんの姿を見つけると、顔を綻ばせ大層嬉しそうに微笑む。だが自分の父親には見向きもしない。
彼女の姿を視界に入れた途端、叔父さんは走り出しそうになり寸でのところでコウちゃんのお父さんが腕を掴み、辛うじて止めたというのに……。
『やっと来たか鷲塚ッ、先ずは白銀だけこちらに来い! 分かっているとは思うが少しでも変な動きを見せたらこの娘の命はないと思え!!』
黒服の中に1人だけグレーの上質なスーツを身に纏った男の人が、こちらに視線を向けてそう声を張り上げる。
コウちゃんのお父さんは躊躇ったようにボクを一瞬見下ろしたけれど、意を決したのかグッと顔を上げると一歩前へ出た。
『咲ちゃんを解放しなければ俺はそちらには行かない! 約束を守る意思があるならその子も離せ!!』
『………いいだろう、お前が中央まで来たら娘を離す』
暫し考える素振りを見せた男は、コウちゃんのお父さんの言葉に頷き同意する。するとボクの前にいる2人はこちらの主張を受け入れられ、ホッと小さく息を吐いた。
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