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第341話
どうするか悩んでいると、遠くのほうから叔父さんのボクたちを呼ぶ声が聞こえてきた。
その瞬間ボクの肩は恐怖からビクッと跳ね、目の前にいるコウちゃんのお父さんに縋る眼差しを向ける。
『――――ッ!?』
『しっ、声を出すな』
緊張から何か喋ろうとしたが人差し指を口元に当てられ、首を左右に振りながらそう言われた。そして息を殺して辺りを伺い、自分たち以外の気配がないかを探る。
ボクは両手でお口を塞ぎながら固唾を呑んでそれを見守ったが、コウちゃんのお父さんの眉間に皺が寄ったのを見て静かに青ざめた。
『マズいな、追手が直ぐそこまで来ている。ゆっくりし過ぎたか……いま下手に動くと却って危険かもしれないな』
『あうっ、ごめんなさっ……ボクの、せい……でっ』
『いや、千影くんが悪いんじゃない。俺が判断に迷ってチンタラしてたからいけないんだ』
コウちゃんのお父さんは宥めるように背中を摩ってくれたが、動揺したボクがそれで気を落ち着けられるハズはなかった。
こんな時だというのに気分はどこまでも落ち込み、すべては自分のせいだと自己嫌悪に陥る。
コウちゃんのお父さんはそれを見てクスリと苦笑を浮かべ何か言おうと口を開いたが、またしてもボクたちを呼ぶ叔父さんの声が辺りに響き渡りそれは叶わなかった。
声は更に続く。ボクの心を確実にえぐるように……。
『千影くんそのまま逃げていいのかい? こちらにはキミの大事な妹がいるんだよ。今なら笑って許してあげるから出ておいでよ、ね?』
『――――ッ!?』
ボクは身が竦み上がった。叔父さんはボクが出ていかなければ妹の愛音を傷付けると言う。
そんなことはさせないと無意識にその場を立ち上がろうとすれば、その身体はコウちゃんのお父さんの手によって引き止められた。
『行かせないっ、千影くんあいつの言葉に惑わされるな! あれはキミを誘き寄せるための罠だッ!!』
『でもっ、ボクが出ていかないとアイちゃんが……』
ボクだって叔父さんの言葉を信じたワケじゃない。だけどこのまま出ていかなければ愛音は酷い目に合う。
それが分かるだけにじっとはしていられなかった。
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