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第347話

遅れて痛みがやってきてもまだ呆然としたまま見上げると、そこにはまるで鬼のような形相をした叔父さんがいてヒュッと短く息を呑む。 『何を寝惚けたこと言ってるの? さっきまでここにいたのが“本物”の愛音だよ。もしあの偽物の子のことを言ってるなら、人身売買専門のブローカーに売り渡してやった。今頃は中国行きの船の上だろうねっ』 『……うそ……も、アイちゃんと……会えない?』 『フン、会えるワケないだろ。お前は地下室から出られなくなるんだしあの子は中国だ。ああ、それからブローカーには加虐趣味のある変態オヤジに売るよう言っておいてあげたから!』 無情にも叔父さんはボクに残酷なことを告げる。うそだ、そんなハズないと弱々しく首を振るけど、叔父さんはそれを肯定してはくれなかった。 遂には呻き声を挙げてボクは泣き出してしまう。 『うあぁ~んっ、アイちゃあぁんッ!……ヒック…アイちゃんどっか行っちゃヤだああぁぁッ!!』 『あ~まったくっ、うるさいガキだな!』 『ーーーうぐっ!?』 床に額をつけて号泣するボクの後頭部に、叔父さんは靴底を乗せて踏みつける。そして更に冷酷なことを告げた。 『心配しなくてもお前もあの子と同じ目に合うよ、この日本にも幼児好きの変態オヤジはごまんといる。精々兄さん譲りの媚を売って可愛がって貰うといいよ』 『ヒック……よぅ……じ、好きって……なぁに?』 何のことを言われているのかボクは最初、本気で分からなかった。頭を踏まれているのでお顔は見えなかったけど首を捻って横を向き尋ねると、叔父さんはゲラゲラ笑い出し後ろに控えている黒服の人たちに視線を向ける。 『お前ら、バカなこいつに教えてやってよ。ついでにこれから自分がどういう扱いを受けるのかも身体に直接叩き込んであげて♪』 『いいんですか、ここで()ッても?』 『別にいいよ、男の処女なんか何の価値もないし』 そう言うと叔父さんは倒れていたパイプ椅子のひとつを部屋の隅へ持っていき、そこにどさりと腰を下ろして脚を組んだ。 何かの了承を得た黒服の男の人たちは、下卑た薄笑いを浮かべながらじわりじわりとこちらに近づく。 彼らのボクを見る目付きがとても気持ち悪くて、ようやく不穏な空気を感じ取ったボクは少し後退した。 だけど直ぐさま彼らに捕らえられると腕を掴まれ、拘束されていた縄を解かれる。

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