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第350話
部屋の小さな窓から見える空が夕焼け色に染まる頃、ボクはその場にいたすべての男の人に犯されようやく解放された。
もうピクリとも動けなくなったボクをそのまま残し、彼らは何も言わずのそのそと部屋を出ていく。
その際にリーダー格と思しき金髪の男の人が叔父さんの肩に手を置き、耳元で何事か言葉を囁いて彼を外に連れ出しているのをぼんやりする意識の中、ボクはただなんとなく目の端に映していた。
でも直ぐにその瞼を閉じる。
下肢は麻痺したように動かず、後孔は酷使した為かヒクヒクと小刻みに痙攣していた。身体のあちこちには複数の噛み跡と鬱血の跡がつけられ、もの凄いことになっている。
でも地下室にいた頃よりも身体があまり辛くないのは、意外にも彼らが後ろを丁寧に解してくれたからだろうか。
外の人は存外優しいのかもしれないと思った。だってあの部屋じゃ誰もボクのことを気遣ってくれる人なんかいなかったから……。
「…………ぁ………」
気がつけばあの甘い香りがしなくなっていた。
そのお陰で意識もはっきりとしてくる。やっぱりあの匂いがボクに何か作用するようだ。
他の人には効かないところを見ると匂い自体は悪いものではなく、ボクに何か要因があるのだと想像できた。
その証拠にボクは煌騎のことをすべて思い出している。あの地下室での記憶も一緒に……。
そこまで考えてパッと閉じていた瞼を開けた。
こんなことができるのは今ここにいる者ではただひとりだけだ。
ボクは動かない身体に鞭を打ってその人物を探す。すると向こうもこちらをずっと見ていたのか、ピタリと目線が合った。
香住センセは変わらずニコニコと微笑んでいたが、またボクに向かって人差し指を立て口元へ運ぶ。そしてその指を今度は床に置かれた小さな香炉に向けられた。
ボクに何か、伝えようとしてる……?
「…………う?………」
でも彼が何を言わんとしているのか、馬鹿なボクには分からなかった。コテンと首を傾げて考えてみても、やはりその意味するものの答えが分からない。
すると香住センセは軽く溜め息を吐くと叔父さんが出ていったドアのほうを気にしながらも、ゆっくりソファから立ち上がるとボクに近づき耳元で囁いた。
「記憶、全部取り戻せた?」
「…………う…うん、」
「そう、だったらもう帰りなさい。下に保護者の方が迎えに来てるから」
「――――ッ!?」
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