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第354話
何かを探すことに飽きたのか全裸にしたボクを置いてきぼりにし、床へ放置したまま周りを取り囲んだ状態で彼らは尚も話し込む。
「でもさぁ、“アレ”って確か普段は見 え な い んじゃなかったか? なんだっけ……感情の変化? で浮き上がってくるって俺は聞いたけど」
「マジかよッ! あ、だからさっき幹部連中が上の部屋に篭ってたのかっ!?」
「色々試してたのかもな。今日は香住さんも来てるし、この為にわざわざ呼んだのかも……」
2人組が腕を組んでボクを見下ろし、興味深そうにジロジロと身体のあちこちを見回してくる。
その不躾な眼差しから逃れたかったが、周りを複数の男の人たちに囲まれていてそれも叶わなかった。
「なぁ、もしそ れ が本当に実在するとしてそんな重要? そりゃ俺も伝説の彫り師が彫ったものは見てみたいけど、それがこいつにあったらなんなの?」
集団の中からひとりの男性が呆れたように言う。まさにボクが思っていたことを代弁してくれてボクは心の中で、彼に激しく同意した。
すると2人組のうちのひとりが、その人のほうを振り返ってバカだなと返す。
「お前知らねーのかよ、鷲塚組の次期組長は代々その伝説の彫り師に墨を彫って貰うのがしきたりなんだとよ!」
「バカはお前だッ、微妙に違うだろ! 伝説の技法を引き継いだ奴に彫って貰うのがしきたりなんだよ。んで、その技法は一子相伝らしくて先代から娘だか息子だかに引き継がれたって聞いたぞ」
もうひとりの男の人が隣に並ぶ男性の頭を豪快に叩いて訂正を入れる。けれど叩かれたほうは頭を擦りながらケロッとしていて、何かを思い出したような顔をした。
「あ~、そうだったそうだった。でもその引き継いだ奴も基さんが知らずに殺しちゃったんだろ?」
「だから是が非でもその生の彫り物が見たいんだってさ」
「うげぇ、めんどくせー」
「まぁそう言うなよ、俺らのチームが大きくなれたのはあの人のお陰だからウチのトップも恩返ししたいんだろ」
そこで話は1度終わり、皆が一斉にボクを見下ろす。どうやら叔父さんを始めこの場にいる彼らは全員、その探しものがボクの身体にあると思っているようだ。
そんなもの、ボクは知らない……。
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