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第356話

―――瞬間、ボクはその場から逃げ出そうとした。 だけど周りを囲まれていた為に抵抗も虚しく、瞬く間に取り押さえられ床へとねじ伏せられる。 それでも諦めきれず必死にもがいていると、目の前に男の人が立って懐から折り畳みのナイフを取り出した。 それをボクのお顔に近づけ、ペチペチと頬を叩く。 「無駄な抵抗すんなよ、お前みたいなモヤシが俺たちに適うワケないだろ」 嘲るように言うと周りの男の人たちもゲラゲラと笑い出す。ボクは悔しくて目の前の男の人をキッと睨むも、頬を手の甲で叩かれて直ぐに怖くなり俯いてしまう。 そして男二人に腕を掴まれ、無理やりその場に立たされた。 「見ろよこいつのっ、小さいのがビビって更にちっさくなってんぞ!」 そう嘲笑われ慌てて下を見ると、全裸にされた上に恐怖で縮こまったボクのものがみんなの前に晒されている。 ボクは恥ずかしさのあまり、更にお顔が上げられなくなり目をぎゅっと硬く閉じた。 「女みたいに可愛い顔したこいつにはピッタリのサイズじゃん。てか上でも十分可愛がって貰ってたようだし、いっそのこと俺らも楽しんじゃわねーか?」 身体に残された痣を目敏く視界に入れた男たちは、そう言って下卑た眼差しをボクに向けてくる。それが目を瞑っていても分かり、憤りを感じながらも下唇を噛んで堪えた。 こんなのは慣れてる。小さい頃からずっとボクは蔑まれ、男の人の性の捌け口として使われてきたじゃないか……。 そう言い聞かせ、無理やりに自分を納得させるしかボクには選択肢がない。とても悲しくてやるせないけど、それがボクに定められた運命なのだから仕方がないのだ。 抵抗を諦めて身体を開こうとした時、後ろのほうで数人の男のうめき声が聞こえた。と同時にざわざわと周りが騒ぎ出す。 何事かとそちらを見ると、そこには一瞬煌騎と見間違えるほど瓜二つな男性がいて、周りを取り囲む男の人たちに殴りかかっていた。 その隣には何故か健吾さんもいる。 二人背中を合わせながら、次から次へと襲いかかる男の人たちを蹴散らしこちらへと少しずつ近づいてくる。そしてボクと目が合うと彼はニッコリ微笑んだ。 ―――あぁ、あの笑顔は間違えるハズがない。ボクの目の前にいるあの人は、数年前に別れたきりのコウちゃんのお父さんだッ!!

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