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第361話
「フン、そっちこそ! せっかく途中まで計画は上手くいっていたのに邪魔してくれてさ、ホントなんなの!?」
「……“なんなの”とは? 何のことだ」
「とぼけないでよっ! コウくんの記憶を消して彼の親友と結ばれるように仕組んだのに、そっちの男が暗示を解いたでしょ!!」
忌々しいとでも言いたげに2人を睨み、叔父さんは喚き散らしながら室内へと入ってくる。
けれどコウちゃんのお父さんは小気味よく口端を上げると後ろを振り向き、健吾さんにわざとらしく「そうなのか?」と首を傾げて尋ねた。
すると健吾さんも含み笑いを浮かべて「さぁ?」と返す。叔父さんの隣で拘束されている香住センセも俯いたまま口角を緩く上げ、それだけで彼らが何かを企てたのだという事が分かる。
でもボクには何のことだかさっぱりだった。
「………どういう、こと……?」
「ん? あ~実は千影くんが倒れた日、こいつから連絡を貰ってキミが暗示にかかっている事を予め聞いていたんだ。勿論その解き方もねっ」
健吾さんが言うにはそれまで、香住センセが叔父さんと繋がっている事を彼は知らなかったという。
けれどボクが倒れたあの日コウちゃんのお父さんから連絡を貰い、今回の企てを知って注意深く観察していた。
幾らコウちゃんのお父さんに懐いているからといって、彼は未だ叔父さんの支配から逃れられてはいないからだ。
もしかすると懐いたフリをして寝首を掻こうとしてるのかもしれない。そう危惧した健吾さんは、一応疑いながらも暗示を解く方法を試してみた。
「まぁ結果から言うとまだ完全に信用するには早いけど、まるっきり信じないワケにはいかない情報だった。言われた通りすれば暗示は徐々にだけど解け始めたしね」
だからボクが姿を消したと知らせを受けた時、迷わず彼に連絡を入れたと健吾さんは言う。
随分と待たされはしたがこの場所を特定し敷地内に潜入できたのも、香住センセが裏で手引きをしてくれたかららしかった。
「まさか飼い猫に噛まれるとは思ってもみなかったよ。幼い頃に闇市で売られてたのを拾ってやったのに、その恩も忘れてさッ!!」
―――バシィイイイッ!!
「やあぁぁぁっ、やめてえぇぇぇッ! 香住センセ打 たないでえぇッ!?」
叔父さんは拘束されて動けない香住センセの顔を執拗に殴る。ボクは悲鳴をあげ、縋るように何度も止めてと懇願した。
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