362 / 405

第362話

必死でお願いしてるのにそれでも叔父さんの手は止まらなくて、彼に駆け寄ろうとするけどコウちゃんのお父さんはそれを瞬時に止める。 ボクの身体を抱き締めたまま、無抵抗の香住センセを打つ叔父さんを睨みつけ声を張り上げた。 「もうよせ! そいつに当たっても無意味だろ!!」 「うるさいッ! コウくんの親友とくっつけた後、記憶を戻して嘆き悲しむそいつの間抜けな様を見ようとしてたのに台無しじゃないか!!」 「そんな事をして何の意味がある! お前のする事はすべて子供じみてて幼稚なんだよッ!!」 勝手な言い分に堪り兼ねた健吾さんもこちらを振り返り、拳を握り締めて叔父さんに怒りをぶつける。 その言葉に怒りが更に増した彼はボクたちをキッと鋭く睨むと、打たれて自力では立てなくなった香住センセの胸ぐらを離し背後の男たちに押し付けた。 「幼稚だとッ!? ハッ! これだから凡人は困る!! 僕の高尚な計画を理解しようともしないんだからなっ」 「何処が高尚だっ! 和之とくっつけるのに失敗したら次は煌騎の暗殺だと!? 笑わせるッ、何もかも短絡過ぎンだよ!!」 両者とも頭に血が上り怒鳴り合うが、ボクは健吾さんの言葉にピクリと反応した。叔父さんは煌騎にまで手を出そうとしていたのだろうか―――…!? 驚愕して目を見開いていると彼はボクを見て、少し溜飲が下がったのかフフンと鼻で笑った。 「コウくんは“あの子”の大切な人だからね、出来れば手は出したくなかったんだけどそうも言ってられなくなった。僕はどうしても“あの子”に鷲塚組を継いで貰いたいんだ!」 「―――だからッ、どうしてそこまで執着する!? そんなに自分が跡目になれなかった事が不満か!!」 憤った様子でコウちゃんのお父さんが問う。 確かに何故そこまでするのか、理由が見つからずボクも不思議に思った。すると叔父さんは今まで以上に取り乱したように、怒りを露わにする。 「当たり前だろっ、僕と兄さんの何が違う!? 同じ日にほぼ同じ時間帯で生まれたのに兄だけが後継者として選ばれ、選ばれなかった僕は放ったらかしにされたんだぞ!!」 「基……そうじゃないっ、要はお前に家のしがらみに縛られず自由に生きて貰いたくて跡目を継いだんだ!」 必死に言い募るコウちゃんのお父さんに、でも叔父さんは首を左右に振った。 それは違うと……。

ともだちにシェアしよう!