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第364話〜ごめん、愛してる〜(煌騎side)

―――チィが屋上から忽然と姿を消してから早数時間が経過する……。 俺は倉庫のリビングで和之たちに足止めを喰らい、自身のイライラを持て余しなごら何度も卓上に置かれたスマホの画面を確認していた。 不機嫌も露わにもう何度目か分からない操作をし着信履歴を確認するがそれは変わりなく、ついでに時計表示も見れば先ほど確認してからそう幾許も経っていない事も判明する。 それが余計にイラつき軽く舌打ちをするとローテーブルにまたスマホを投げ置き、ソファの背もたれに背中をドサリと預けて今は邪魔でしかない長い脚を組み直す。 その様子を同じくソファに座りながら朔夜と虎汰が呆れたように眺め、部屋の入口では和之と流星が立ち塞がって仁王立ちとなり各自腕を組んで俺を静かに見張っていた。 ことは今からチィが姿を消した時間帯にまで遡る。 あいつがいなくなったと気づいた同じタイミングで健吾から連絡が入り、そして理由も告げず一方的に“お前は動くな”と押し切られたのだ。 当然の事ながら俺は納得がいかず電話をブチ切ったのだが、今度は和之のスマホが鳴りこいつら4人掛りで身柄を拘束されこの部屋に閉じ込められた。 あの様子から和之だけは詳細を知っていると伺えたが、俺がどんなに頼んでも脅しても懇願しても口を割らない。 しかしその度に苦しそうに顔を歪めている事から、あいつも本意ではないのが明白だった。 恐らく和之自身もチィの元へ一刻も早く駆けつけたいと思っているだろう。その気持ちが分かるだけに無理やり問い詰めるのは気が引けた。――が、いま優先すべきはチィだ。 例え健吾の頼みでも聞けない事はある。もしも俺の知らないところで、またチィの身に何かあったらと思うと気が気ではない。 それは奴も同じ筈……、ならそこにつけ込めばいい。 「和之、いい加減この茶番を終わりにしないか。お前だってチィを迎えにいってやりたいだろっ」 「ハァ………無駄だよ煌騎、今回は残念だが本当に俺たちの出る幕はないんだ」 「そこまで言い切るのは何故だッ、いま裏では何が起きているッ!?」 痺れを切らして怒鳴れば和之はまた悔しそうに顔を顰める。という事はそれだけデカい組織が今、チィ救出に動いていると推察された。 だがこいつの悔しがり様から、俺の知っている組織とは異なるようだ。では一体どこの組織が―――ッ!?

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