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第367話
事前に健吾から聞き出した情報によるとチィは今、隣街の使われなくなった港倉庫に監禁されているらしいとの事だった。
和之自身も絶対に動かないという約束で教えて貰った為に正確な位置までは把握しておらず、先に偵察へ向かわせた佐田と大地の話では似たような建物が建ち並び特定が難しいという。
だが昨夜までウチと揉めていたこの街を拠点とするチームが不自然に出入りする倉庫を発見し、元の拠点を知っているだけにそれだと当たりを付け観察を続けたところ的中した。
族の溜まり場にしては不釣り合いな黒服の男が数人、同じ建物内に入っていくのを何度か目撃したとスマホを通じて2人から報告を受ける。
「街に入る前に偵察を向かわせて正解だったな。敵地にこんな大勢で乗り込んでたらすぐ向こうに動きを読まれてただろうから」
「だな、」
和之が手前にある自分のグラスのストローを指先で軽く摘み、クルクルと回しながら溜め息を吐いた。
それに同意するように流星が頷き、カップのブラックを一気に煽る。
俺たちは高速インターを降りて直ぐ、人気のない喫茶店に入り幹部だけで作戦会議をしていた。残りの連中はとにかく隣街に入るまでは目立たせないよう、高速の各パーキングエリアに少数に分けて待機させてある。
「……見たところこの黒服、エンブレムも付けてないし何処の組の者でもないんじゃないの?」
卓上に置かれたタブレットで大地がスマホで撮影する倉庫前の状況を確認中、虎汰がおもむろにポツリとそんなことを言う。
最初は何のことを言っているのか分からなくて俺は首を傾げたが、隣の和之が何かを察したらしくクスリと笑った。
「いや、今時そんなものを律儀に付けている組員はいないよ。寧ろ最近は法律の改正やなんかで警察の取り締まりも厳しくなってるから、組を上げて外させているところが殆どだ」
「えっ、そうなのか!? 」
その返答に虎汰はさも驚いたと言わんばかりに流星と顔を見合わせ、それから大袈裟なほどに肩を落とす。
恐らく2人は健吾辺りから借りた漫画で得た極道に関する知識が、ここにきて役に立たないと知って落ち込んでいるのだろう。
借りた相手が悪かったなと、俺と和之は苦笑いを零して2人を宥めてやった。
しかし軽口を言い合うのはそこまで……。
朔夜に支給された軍事用のインカムから奴の声が届いたからだ。
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