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第371話
そんな前から関わっていたとは思いもしなかった。あ の 人 は俺との関係を断つ為に別れを切り出したと思っていたから……。
だが今の話を聞く限りでは、どうやら別の意図もあったらしい。
しかしこれ以上新しい情報の収穫はなさそうだと判断した俺は先を急ぐ為、音もなく中に忍び込むと無駄口を叩いていた3人の男を瞬殺で床に沈めた。
それを確認した虎汰と雪は無言のまま室内へと入ってきて、何か聞きたそうにこちらへ視線を向ける。
「……今の、どういう意味? チィに妹がいるの?」
「それは俺も初耳だ。どうやら健吾の奴、この事を知っていて黙っていたようだな」
チィを保護してからこれまで、あいつとは秘密裏に色々と情報を交換し合ってきた。だがまさかまだ自分に隠し事をしていたとは思わず、苦虫を噛み潰したような顔になる。
そもそもあいつ自体も謎の多過ぎる男なのだと、今更ながらに痛感した。
「他にも『白粉彫 り』って……。確か都市伝説にもなってる刺青のことですよね? 昔そういう技術があったと聞いた事がありますがどうしてそんなものがチィさんに? あの子は一体何者なんですッ!?」
「………虎汰も雪も、悪いが俺も分からない事が多過ぎて少しばかり混乱している。そう急かさないでくれると助かるんだが」
「あっ、すみません! あの子があまりに不憫でつい気が急いてしまって……」
雪は矢継ぎ早に質問をし過ぎたと気づき直ぐに詫びる。だが虎汰は納得がいかないのか、俯き黙ったままだ。
その気持ちも分かるだけに俺は知り得る事は皆打ち明ける事にした。先ほど得た情報の中に気になるワードがあった事を、虎汰や雪だけでなくインカムを通して和之や流星と朔夜にも告げる。
「ロシアという国名を聞いて、思い浮かぶ人物がひとりだけいる。……俺の母親だ」
「え、煌騎のッ!? それどういうことだよッ、ますます分からなくなってくるんだけど……」
「すまない、今まで黙っていたが俺の母親はロシア人なんだ。父さんと何処でどう知り合ったかまでは知らないが、大恋愛の末に日本へ駆け落ち同然で逃げてきたらしい。それから母さんは母国ではかなり有名なマフィアのボスの愛娘だった」
「ーーーはぁッ!?」
虎汰は声を上げて驚くがそれも無理はない。その事実は誰にも打ち明けたことのない秘密だったからだ。
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