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第372話

実際それを打ち明けたところで皆も対応に困るだけだろうし、俺の存在が()()()に知られれば攫われる可能性もあった。 しかし両親が離婚した際に1度向こうから接触があったが、俺が日本を離れる気はないと告げると意外にもあっさりと引き下がった為、結局その事は俺の胸の中だけに仕舞っておいたのだ。 父さんと別れたあと母親は母国に帰ったと人づてに聞いたが、親元に帰ったかまでは聞いていない。 しかし今回チィ救出に父さんが関与しているのなら、間違いなく母さんもそれに手を貸しているだろう。 あの2人は俺を守る為に離婚を決意したのだから……。 『じゃあチィの妹とかいう子は、お前の母親が保護しているかもしれないんだな?』 「あぁ、多分……な。そしてその子が恐らく長年行方が分からなかった本物の『愛音』だろう」 「ちょっ、待てよ長年って……お前は初めから鷲塚組にいる()()愛音が偽物だと気づいていたのかッ!?」 確認するように和之が尋ね、俺は頷く。皆は更に驚いて言葉を失い、目の前の虎汰や雪に至っては目を見開いて息を呑む。 それについても俺は無言で頷き10年前に何が起きたのか、俺の知る限りのことを洗いざらい話した。 インカムを通して和之や流星に朔夜も聞いていただろうが、その間誰一人として口を挟む者はいない。 そしてすべてを話し終えた頃、インカムで流星が静かに口を発した。 『……ならさ、その伝説とかいう刺青があるチィは何者なんだ? お前の両親は何故そこまでして実の子でもないチィを守る?』 「話しの流れ的には『伝説の彫り師』の孫、なんだろうけど……。それじゃいま鷲塚組にいる奴は誰なんだよっ、何でチィやその妹とかいう子に顔が似てるんだ!?」 『整形か或いは血の繋がりがあるか……。でも本当に分からない事だらけだな、これじゃ煌騎が話せないのも分かるよ』 流星や虎汰はただひたすらにパニクっていたが、朔夜は意外に冷静だった。静かに情報を解析し、独自の視点で今ある答えを導き出す。 すべては俺の父親が鍵を握っているようだから、直接会って聞こうということになった。危うく忘れそうになっていたが、俺たちはまだ敵陣の敷地内にいて、チィは囚われたままなのだ。 一刻も早く助け出してやらなければと、皆の思う気持ちはひとつだった。

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