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第374話

動揺のあまり動きを停止していると、“その男”は俺を視界に入れ薄気味悪い笑みを浮かべた。 「おや、顔はよく見えないけど煌騎くんかな? まさかキミのほうから来てくれるとは嬉しいね、迎えにいく手間が省けたよ」 「―――煌騎ッ!? どうしてここに来た! お前が来ると面倒になるとあれほど言っておいたのに!!」 健吾は対峙する男の胸ぐらを掴んだまま、振り返りながらそう怒鳴る。それに釣られて奴の傍らにいる父さんや、その腕の中にいるチィも微かに反応しこちらを戸惑いながら見た。 だが俺は目深に被ったフードをより深くして顎を引き、更に顔を隠しながら両側から襲ってくる攻撃を難なく躱して前に立ち塞がる男に回し蹴りを喰らわせる。 するとその後ろで同じくフードを目深く被って現れた虎汰と雪が、俺に攻撃を躱されて体勢を崩した連中にとどめを刺して床に沈めた。 「てめぇッ、()()()の立てたせっかくの計画を台無しにする気かよッ!?」 「抜け駆けは禁止ですよ! ()()も参戦します!!」 背中合わせにそう言われ、俺は思わずフッと口端を上げて笑ってしまう。咄嗟に身元がバレないよう顔を伏せてはいるが、どう見てもこのメンツでは無理のある作戦をこの2人はまだ続行するつもりらしい。 しかし今度は反対側の入口から、別ルートで駆けつけた優心と大地が同じく口元だけを覗かせた格好で現れ、入口付近にいた輩を瞬く間に殲滅する。 「どうやら()()()も何とか間に合ったようですね」 「もうっ、先に行動を起こすなんてズルいッスよ!」 全速力で来たのだろうが優心のほうはまだ余裕があり、大地のほうはゼィゼィと息が上がってキツそうだ。けれど少しでも()()()()見せようと胸を張り、身体を大きく見せる。 「おいっ、駆けつけたのは何もそいつらだけじゃないぜッ!!」 その時頭上から声が響き渡りそちらへ視線を向ければ、そこには吹き抜けの2階渡り廊下から佐田と影山が同じような格好で現れ、荒い息のまま腰に手を当ててニヤリと笑う。 「フン、2階に潜んでた狙撃手(スナイパー)()()が仕留めさせて貰ったぜ? 残念だったな!」 そう得意げに影山が言うと、気を失った全身黒ずくめの男を足元へ放り投げた。佐田の手には奪ったライフルが握られている。

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