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第377話

『彼が()()()()と将騎の息子か、なるほど確かにボスと瞳が同じだ』 感嘆の声を上げる男に父さんがクスリと笑う。 そして懐かしむように目元を細め、何故か俺を見ながら2人は異国の言葉で会話し始めた。 『顔は俺に似てるがレイラの血が色濃く出てるだろ? フリードマン家の男のみに引き継がれるというオッドアイだったか』 『本当に惜しいな、これほど美しい色合いは見た事がない。彼が()()()()()を継いでくれれば象徴として申し分ないのだが……』 『悪いが友との約束でね、息子は鷲塚組の跡継ぎであるその子にくれてやったんだ』 人の事を不躾に上から下まで見下ろし、尚もジロジロと見ながら話す2人にいい気はしなかったが会話の中に母さんの名を聞き取れたのと、奴の腕の中にいるチィにも温かな眼差しを送ったので一応は押し黙る。 恐らく両親共通の知り合いかマフィア関係の知り合いか、或いはそのどちらもなのだろう。 だが今はそんな事はどうでもよく、奴の腕の中で未だ息の荒いチィが気掛かりで仕方がなかった。 すると銃で撃たれた流星の腕を応急処置していた健吾がようやくこちらに戻ってきて、その様子を伺っているのを見てホッと胸を撫で下ろす。 あれほどもう危険な目には絶対に合わせないと誓った筈なのに、またこいつを守れなかった……。 自分の存在自体がチィを苦しめているのだと知り物分りの良いフリをして自ら離れたが、本当は忘れられたのが単純にショックだったのかもしれない。 己の不甲斐なさを死ぬほど呪い、馬鹿な決断をした事を後悔したがすべては後の祭りだ。 彼に近づき震える手を痩けた頬に伸ばしかけるが途中で止めた。俺にはもうチィに触れる資格すらない。 どうしてこうも物事はままならないのだろう。 こんなにも愛しくて大切な存在なのに、その愛する者すら俺は満足に守る事ができないなんて……男として失格だ。 怒りの向け先を見失って下唇を強く噛み、拳を強く握り締める。しかしそんな後悔の念に囚われている俺に、健吾は無情にも振り返り傍に来るよう言う。 チィが初めて背中に刺青を浮かび上がらせた影響で感情が暴走し、自分では制御できなくなったらしく俺に落ち着かせるよう声を掛けろと言うのだ。

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