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第381話

少し困ったように眉を下げ、けれどもどこか楽しそうにも見えるお顔で言う煌騎のお父さんを不審に思いつつ、ボクは首を傾げながらこちらを振り返る煌騎を背後から見上げた。 彼はどうしたいのだろう……? 「俺は会っても構わないが、チィが嫌だと思うなら無理に会う必要はない。どうする?」 「ん、じゃあ……えと、会うだけ……会ってみる」 ボクは同意する意味を込めてこくんと頷く。 それを確認した煌騎のお父さんはホッと安堵したように詰めていた息を吐くと、後ろで控えていたアレクさんに向き直りロシア語で何事かを伝えた。 彼は短く「Да《ダー》」と答えると踵を返し、静かに部屋の奥へ消えていく。 その間にボクらは中央のソファに座るよう勧められた。其方を見れば怪我人の流星くんと香住センセは既にそのソファで健吾さんから治療を受けていて、その周りをたくさんの黒服を着た外国人さんがサポートとして行ったり来たりしている。 なのでその邪魔にならないようにと、ボクと煌騎は向かいのソファの隅のほうへ腰を下ろした。 「何故そんな隅っこに座る? ソファはこんなに広いんだ、何処でも好きにゆったりと座ればいいのに」 「う? でもぉ……」 「ほら、もっとこちらへおいで。千影くんは甘いジュースは好きかい? 良かったら美味しいお菓子もたくさんあるからお食べ?」 「……………………千影?」 何かと世話を焼こうとする煌騎のお父さんをよそに、治療を受けていた流星くんとボクの隣にいる煌騎がピクリと反応を示す。 そうだ、彼らはまだボクの本当のお名前を知らない。 ようやく記憶を取り戻せた事を2人に教えてあげなければと口を開けかけた時、アレクさんが消えた先からけたたましい足音と共に女の子の叫び声がした。 ボクはビクリと身体を跳ねらせたけど、その異国の言葉が発せられたほうへと顔を向ける。するとそこには可愛らしい小柄な少女が瞳に涙を溜めて佇んでいた。 その顔は思い出したばかりの記憶のものより幾分か成長していたが、それでも少し面影があり兄であるボクが間違えるハズもなく……。 「………………ウ…ソ、アイ…ちゃ……ん?」 『―――お兄ちゃんッ、やっと……やっと会えた!』

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