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第383話
「ヒック………ヒック……ふっ……ぅうっ」
ひとしきり泣いた後ボクに襲ってきたのは、人前でわんわんと幼い子供のように声を張り上げて泣いた事への羞恥だった。
それは向かいにいるアイちゃんも同じなようで、お互い目が合うとクスッと照れたようにはにかみ合う。
すると今まで暖かく見守ってくれていた煌騎のお父さんとアレクさんが、ボクたちにとりあえずソファに座るよう勧めてくれた。
見ればそこにはいつの間にか、美味しそうな洋菓子が食べきれないほどテーブルいっぱいに並べられている。
見た事もない綺麗なお菓子ばかりで目をキラキラ輝かせると、アイちゃんがまたクスッと笑って手を引いてくれ勢いよく立ち上がり、ボクをソファまで連れていってくれた。
『ふふ、お兄ちゃん昔から甘いお菓子が大好きだったもんね! 相変わらず可愛いトコは健在で良かった♪』
「う? アイちゃんなんで笑うの、ボク女の子違う」
この間、流星くんにからかわれたのを思い出し、何を言われたのか分からないながらも笑われたのでぷくっと頬を膨らませそう抗議すれば、煌騎のお父さんがアイちゃんの言葉を教えてくれる。
彼女は『懐かしい』と言ったのだそうだ。
そう言われてようやく子供の頃、アイちゃんと仲良くおやつを食べた日々を思い出す。
「あ、そか……うん…そだね。よくお庭でお母さん手作りのパウンドケーキをアイちゃんと食べたっけ」
何気なく言ったボクの『お母さん』という単語にみんなが反応し、ちょっと複雑なお顔をする。
理由が分からないボクは首を傾げ、でも気を取り直して満面の笑みでアイちゃんに早く食べようと袖を引っ張った。
『あ、うん、食べよう! お兄ちゃん好きなの食べていいからね』
アイちゃんは女の子らしくボクの前にお菓子をたくさんよそってくれ、甘い紅茶なども淹れてくれる。
ボクのほうが年上でお兄ちゃんなのに妹に世話をされてちょっと恥ずかしかったけど、美味しそうなお菓子を前にそんなことはどうでも良くなった。
頬っぺが落ちそうになるくらい美味しいそれに、ご機嫌になって煌騎たちにも食べるよう勧めてあける。
けれど彼らは甘いものが苦手なので、苦笑いしながらも断られてしまう。あぁ、そうだったとその事を思い出したボクは残念に思ったけど、アイちゃんの淹れた紅茶は飲んでくれたので満足した。
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