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第384話

ボクが美味しいお菓子に舌鼓を打っている間、煌騎や治療中の流星くんはというと煌騎のお父さんや健吾さんから今回の事を含め、過去からの経緯を話して貰っていた。 そんな事とは知らずボクはお話の合間に隣に座る煌騎のお顔を見上げては……、 「煌騎これとっても美味しいよ、食べる?」 と、感動を彼と共有したくて声を度々かける。 かなり鬱陶しかっただろうがけれども煌騎は、嫌な顔ひとつしないでクスリと笑い…… 「俺はチィが美味そうに食ってるのを見てるだけで充分だ。だからソレは全部お前が食べろ」 と、返してくれた。 そしてボクの口の端についた生クリームを親指の腹で掬い取ってくれ、そのまま指を自分の口元へ持っていき()()をペロリと舐める。 煌騎は食事の度にこうしてくれるのだけれど、その仕草がなんだかとっても色っぽくてボクはいつもドキドキしてしまう。 お顔を赤らめポーッとそれを見ていると、横からアイちゃんがキャーッと短い悲鳴のようなお声を上げた。 どうしたのだろうとそちらを見れば彼女は頬を赤く染め、期待の眼差しでボクらを見つめている。 「ど、どしたのアイちゃん? ボク、まだお口にクリームついてる?」 『―――ねぇねぇ、もしかしてそちらの彼とお兄ちゃんは()()()()そういう関係なのかしらッ!? 将騎おじさま、どうなの?』 興奮した様子でアイちゃんは何故か煌騎のお父さんを振り返り、何事かを尋ねてまたきゃあきゃあと騒ぎ始めた。 そんな彼女に後ろに控えるよう立っていたアレクさんはこめかみを指で押さえ、大きな溜め息を吐いて肩を落とす。 言葉が分からないボクはコテンと首を傾げたが、煌騎のお父さんがこちらを見ながら苦笑いを浮かべているのを見て、やはりボクのお口にまだクリームがついてるのだと思った。 途端に恥ずかしくなり慌てて口元を手の甲でゴシゴシして、また煌騎のほうにお顔を戻して首を傾げる。 「煌騎、取れた?」 「チィ大丈夫だ、もう何もついてない」 彼はちょっと困ったように眉を下げたけど、そう言ってボクの頭を優しく撫でてくれた。 それがとても気持ち良くてついうっとりと瞼を閉じかけるが、みんなの前だったと思い出し照れ笑いを浮かべる。 煌騎はそんなボクにもふんわりと優しく笑いかけてくれ、頭を撫でる手を少しずつ下に移動させると頬や耳の後ろを擽るように擦った。

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