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第386話

「最初は俺の勘違いだったんだ。あの日あいつの家に訪問するまではそう思い込んでいた。だがイタズラ好きの要がその事を知り、いつ頃お前が千影くんの本当の性別に気づくか試そうと言い出した」 「………試そうって、あんた仮にも俺の父親だろ。止めろよっ」 「あはは、まぁそうなんだが俺も内心面白そうだと思ってしまったんだ。でも結局あの騒動が起こってしまった為にそのまま訂正もできず、俺は姿を消す羽目になった。お前には本当にすまないと思っている」 煌騎のお父さんはそう言うと潔く頭を下げた。 しかし聞かされた内容に煌騎も流星くんも呆れたお顔をして、互いに顔を見合わせどう反応を返せばいいのか困ったように眉尻を下げる。 するとそれを見兼ねた健吾さんが、流星くんの背中を思いきりパシッと叩いた。突然のことに彼は痛みを堪えながらも、その理不尽な暴力に目を見開き抗議する。 「痛ぇーなッ、何すんだよ健吾ッ!?」 「お前ら細けぇーこと気にすんなっつの! どう揉み消したかは分からないが、俺が千影くんの行方を捜索し始めた頃には既にその生きた痕跡すら綺麗に抹消されてたんだ。将騎さんだけが悪いワケじゃないだろ」 「いや、そりゃそうだろうけど……っ」 もっともな言い分に反論できない流星くんは治療を終えた肩を庇いながら、やるせない気持ちを隠しソファの背にもたれかかる。 今更なにを言ってもすべては過去の話だ。 過ぎた事をグダグダ言っても変えられないとはいえ、もう少し早くその事を知っていれば何かできたのではと思ってしまうのだろう。 けれど健吾さんは首を静かに横へと振った。 「おそらくは()()さんの長男が生きてると都合が悪かったんだろ。だから俺も彼の存在は煌騎以外には他言しなかったし、その煌騎にも正確な情報は与えなかった」 「………どういう……事だ?」 「話せば長いんだがっ―――…」 「ちょっ、ちょっと待てよ! あんた今『()()さん』って言ったか? え、誰と誰が兄弟なんだよ!? もうワケが分かんねーッ!!」 難しい話についていけなくなったのか、流星くんはウガァーッと唸り出すと頭を抱える。それを周りは呆れたように流星くんを見つめ、深い溜め息を吐いた。 その頃ボクはというと、とうの昔に聞く体制にはなくフォークの先を咥えながらアイちゃんオススメのケーキを食べ、流星くんの面白いお顔を眺めて苦笑を零す。

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