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第387話
と、それまでアイちゃんの後ろで何も言わず控えていたアッシュブロンドのイケメンさんが、話を中断させる為にコホンと小さく咳をひとつした。
途端にみんなが彼を一斉に見る。
しかし注目を浴びてもなお彼は瞼を閉じたまま、微動だにせず腕を後ろ手に組みその場で佇んでいた。
それからゆっくりと目を開け、煌騎のお父さんのほうに視線を向けると特に表情も変えず言葉を発する。
『将騎、彼らに事情を説明する前にまず彼女と俺の正体を明かしたほうがいいと思うんだが?』
『あ、あぁ、そうだったな。すまない、すっかり忘れていた』
『フッ、だろうな。いつもの事だし慣れてるよ』
また異国の言葉で交わす2人にしばらくボクたちは口も挟まず見守っていたけど、短い会話のあと煌騎のお父さんは渋いお顔をする。
どうやら彼に何かを指摘されたようだ。
でもそれに関して咎めるつもりはないようで、アレクさんは諦めた様子で軽く鼻で笑う。
申し訳なさそうに眉を下げると煌騎のお父さんは、座ったままボクたちに向き直り彼の紹介を始めた。
「紹介が遅れたが彼は俺の元妻の妹の旦那で、数あるロシアマフィアの中でも名高いフリードマンファミリーの幹部を務めている男だ。名前はアレクセイ・フリードマン、彼はいずれ千影くんの妹でもある彼女の義父にもなる」
「「――――ッ!?」」
「う? んと、んと……煌騎『義父』ってなぁに?」
「………義理の父親という意味だ。つまり父さんはこの人の息子とお前の妹が近い将来、結婚すると言っている」
「ふえっ!? アイちゃん結婚するの!?」
突然の嬉しいニュースにボクはびっくりする。
慌ててアイちゃんを振り返れば、彼女は言葉が分からない為にいきなり注目を浴びてキョトンとしていた。
でも膝の上に乗せられたその華奢な指には沢山の宝石を散りばめられた指輪が嵌められていて、煌騎のお父さんの言葉が正しい事を物語っている。
大人の事情を匂わせるそれらに、煌騎たちは眉間に皺を寄せ渋い顔をした。
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