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第388話

それを察した煌騎のお父さんは苦笑いを零すけれど、否定するように首を左右に振る。 「確かに彼女の婚約があったからこそ、今回フリードマン家を動かす事ができたのは事実だが、結婚自体は彼女の意思で決めた事だ」 そう誤解を解こうとするも煌騎らは訝しむ顔を一向に崩さず、目の前の大人たちに非難の目を向け続けた。 今まで大人の都合で振り回され続けてきた彼らにとって、もう大人の言葉は届かないのかもしれない。 煌騎のお父さんは困ったように肩を竦めると、助けを求めるようにアレクさんやアイちゃんに異国の言葉で事情を説明する。 すると途端に彼女は驚いた顔になり、首を横にブンブン振って何事かを抗議した。 『ちょっ、待ってよ!? 私とキールはちゃんと相思相愛だよ? 寧ろ私のほうが彼にゾッコンでようやく口説き落としたくらいなんだからっ』 『フッ、そうだな。プロポーズは()()()からだったか? 我が息子ながら彼女に押されて情けない姿を晒すあいつは本当に滑稽だったよ』 『むーっ、それどういう意味よ! まぁそれは置いとくとして……だから私の戸籍を乗っ取ったあの子には腹が立ってるの! そこの彼が好きなら振り向かせる努力をすればいいのに、こんな姑息な手を使って……ホンットむかつくったらないわ!!』 可愛らしいお顔でプリプリと怒るアイちゃんに、後ろのアレクさんはクスリと笑って彼女を宥める……。 2人の会話を煌騎のお父さんが訳してくれて真相を知りボクは驚きつつも、アイちゃんが『アリナ』と異国の名前で呼ばれている事に気づき胸が締め付けられた。 この10年の間、彼らに愛され幸せに過ごせていたのはその話を聞く限り疑いようもなく安心したが、彼女は自分の名前を奪われ住む場所も奪われたのだ。 せめてもの救いは逃れた地で結婚したいと思えるほどの人と出逢えたという事だけだが、堪らず彼女の手を取りぎゅっと握るとアイちゃんは「私は今とっても幸せよ」とでも言うように、満面の笑みをボクに見せてくれた。 煌騎や流星くんも2人のやり取りで通訳が嘘ではないと分かり、苦笑しながらも納得した様子でとりあえず話の先を聞く体制となる。

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