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第389話
「そして彼女こそが正真正銘、千影くんの妹であり俺の親友、鷲塚 要の娘の愛音ちゃんだ。今はワケあって『アリナ』と名乗っている。10年前のあの日、基の魔の手から奪還し今日までフリードマン家が大切に保護してきた」
煌騎のお父さんは彼らの前でそうはっきりと宣言した。それによりアイちゃんが漸く自身を取り戻せたような気持ちになり、ボクの目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。
ここまで来るのに長い月日がかかった。途中何度も諦めかけたけど、挫けずに頑張って本当に良かったと思う。
隣を見ればアイちゃんの瞳にも微かに涙が溜まり、けれども天井を睨みつける事で辛うじて堪えているといった様子だった。
それを見てはたと気づく。そうだ、まだ全ては終わっていない。ボクらのお祖父ちゃんは彼らの嘘に囚われ、あちらについたままなのだ。
そう認識すると彼女を見習い溢れ出た涙を乱暴に拭って、こちらを心配そうに見る煌騎のお父さんに再びお顔を向ける。
それから彼に頷き目線で話の先を促した。
「あの日、基の不穏な動きを逸早く察知した俺の元妻レイラは実家 に要請し、中国行きの船に積み込まれた愛音ちゃんを迅速に救出した」
しかしフリードマン家は彼女を日本へは帰さず、そのままロシアへと連れ帰ってしまったのだという。
例えいま彼女を祖父の元に戻したとしても、その後また連れ去られては意味がない。煌騎のお父さんと一緒にいるハズのボクの行方も分からず、彼とも連絡が取れない状態では帰せないと判断したのだろう。
しばらくして叔父さんの拘束から逃れた煌騎のお父さんと連絡を取れるようにはなったが、依然としてボクは行方不明のままで手の打ちようがなかった。
だからアイちゃんは煌騎のお母さんの養女となり、ロシア国籍を取得して完全なロシア人となる事で身を守ったのだ。
「アレクの情報によるとあいつのバックについているのは中国系のマフィアらしい。その中国系ってのがまた厄介で奴 ら の狙いはロシアでも名高いファミリー、フリードマン家と強い繋がりを持つ事なんだそうだ」
それ故に当時レイラさんの夫だった彼と深い繋がりのあった、父さんや叔父さんが狙われたのだと渋いお顔をして煌騎のお父さんが言う。
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