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第390話

歴史が長く世界中に大小様々なパイプを張り巡らせるフリードマン家は、()()にとって喉から手が出るほど魅力的なファミリーだったのだろう。 是が非でもそのフリードマン家と親戚関係を築きたかった中国系マフィアは、結婚した後も鉄壁の護衛(ガード)を維持し続けるレイラさんを拐かすより簡単な方法を選んだ。 「それがお前だ、煌騎……」 申し訳なさそうに眉を八の字にさせ、煌騎のお父さんは哀れみの目で彼を見る。生まれる前から本人の意思とは関係なく、親の持つ権力が大きければ大きいほど子やその孫が犠牲になるのは仕方がない。 どんなにそれから逃れようと模索しても、何処からか情報が漏れ生活に影響してしまう。 しかし当時、既に疎遠になりかけていた叔父さんが何故か奴らに目をつけられ、世にも美しい中国人女性が彼に急接近してきた。それが後の元凶、咲ちゃんの母親となるのだが……。 もちろん彼に警告はした。だがあまりにその女性が美しかったが為にひと目で恋に落ちた叔父さんは、周りが見えなくなり誰の忠告も受け付けなくなったのだ。 それこそお祖父ちゃんに勘当されても、叔父さんは頑なに自身の恋を貫き通した。 煌騎のお父さんは愛するレイラさんを守る為、仕方なく彼と距離を置く事にしたのだがそれが後々まで尾を引くとはその時夢にも思わなかったと語る。 「……経緯は分かった。だが誰でも何かしら背負うものはある。それに関してあんたが気負うことは何もないだろ」 何でもないと言いたげに煌騎は鼻で笑い、父親の憂いを一瞬で払拭した。そして家族を守ってやれなかったと後悔するよりも、自分たちには先ずしなければならないコトがあると言う。 叔父さんとその中国系マフィアの手によって歪められた世界を元のあるべき姿に戻す。それが何の関係もないのに巻き込まれた、ボクやアイちゃんに対する誠意だと彼は言った。 「………あぁ、そうだな」 何かを吹っ切ったように頷くと煌騎のお父さんはクスリと口角を上げ、息子の成長を心の奥底で喜んでいる様子だった。

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