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第393話

「………やはり俺だけじゃ頼りないか?」 不安な気持ちが顔に出ていたのか人肌恋しくて煌騎の腕にしがみついたら、彼が苦笑を浮かべて顔を覗き込んできた。 そんなこと微塵も思ってなかったボクは、彼に余計な心配を掛けてしまったのだと気づき慌てて首を横に振る。 「ううんっ、全然頼りなくなんかないよっ!? みんないなくなって急に静かになっちゃったからちょっと寂しく思っただけだもんッ」 「そうか、ならいいんだが……」 勢いよく首を振り過ぎたのか煌騎は喉の奥をククッ鳴らし、また苦笑いを浮かべたけど頭をポンポンと撫でてくれた。 それが嬉しくて彼の胸にむぎゅうって抱きつけば、脇に手を入れられ身体が浮き少しの浮遊感のあと膝の上に着地する。 そしてそのままボクの頭を胸に引き寄せ、心ゆくまで甘えさせてくれた。 「…………あ………」 「う? どしたの、煌騎」 「ん、どうやら俺たちのメシを用意してくれてたみたいだ」 不意に小さく声を洩らし広いリビングの奥に目線を配る煌騎に釣られ、ボクもそちらのほうにお顔を向ける。 すると夜景が一望できる窓際には食事をとれる食卓があり、真っ白なテーブルクロスが敷かれて綺麗にセッティングされたディナーが二人分用意されていた。 どれも冷めても食べられる()()ばかりで、ボクは思わず生唾を飲み込む。 先ほどから良い匂いが漂ってきていたのはコレだったのかと妙に納得し、それと同時に食べ物を目にしたからボクのお腹の虫さんが途端に暴れ出した。 2人の間からキュウウゥゥッとなんとも情けない音が響いてしまい、急いでお腹を押さえたが時既に遅く煌騎の目は驚きに見開いている。 ボクは恥ずかしくて俯いた。 たぶんお顔は真っ赤だ。 「朝食ったきりで何も食べてないんだろ? だったら腹が鳴るのは当然だ。何も恥ずかしい事じゃない」 「ホント? ボク、お行儀悪くない?」 「あぁ、俺もさっきまで空腹は感じてなかったんだがチィの腹の虫で自覚した。一緒に食おう、な?」 優しく気遣ってくれる煌騎にこくんと頷くと、彼はいい子だと頭を撫でてくれたあとボクを抱き締めたまま立ち上がり、対面式の食卓のほうへ歩いていく。 それから片方の席を引いてボクをそこへ降ろそうとしたけど、煌騎から離れたくなくて彼の首元に腕を回したまましがみついてしまった。

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