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第395話
試しに舐めてみろと言うのでボクはグラスを少し傾けて、短い舌を突き出しぺろりと舐めてみた。
「……う? 何だかいつもと味が違う」
甘いには甘いのだがその奥に微かな苦味がある。子供味覚のボクは思わず眉間にシワを寄せると、このジュースは飲めないと判断してグラスを突き返した。
興味津々で見ていた煌騎は口角を緩く上げてクスリと笑い、黙ってそれを受け取るとテーブルに置いてまた別のボトルを小さなバケツから取り出す。
そしてシュワシュワと音のする透明の液体をグラスの半分まで注ぎ足し、ひと口飲んでまたボクに差し出した。
「これならチィでも飲めるんじゃないか?」
「う~、苦くない?」
「甘い炭酸で割ったから苦味は薄まっていると思う。だがチィが気に入らなければ無理に飲まなくていい。他にも飲み物はあるんだから、な?」
煌騎はそう言って楽しそうに笑う。
ボクが初めて『酒』というものに口をつけるから、その反応が楽しいのだそうだ。
けど強要する気はないようなので、ボクはもう一度グラスを受け取ると今度は舐めるのではなく彼のように思い切ってひと口含んでみることにした。
すると足したシュワシュワが丁度いい感じに喉を刺激して、先ほど感じた苦味はあまり気にならない。
驚いて煌騎のお顔を見れば、彼も目を細めて笑うと自分のグラスをボクのグラスにカチンッとまた当てた。
「どうやら気に入ってくれたみたいだな」
「うん! 煌騎コレ美味しいね♪」
頬を紅潮させながら言うと煌騎もニコニコと笑ってくれる。それが嬉しくてボクはコクコクとグラスを傾けそれを飲んだ。
でもそれを見て慌てた彼はその手をグラスに添えて止め、まだ沢山あるからゆっくり飲めと宥められた。
それから目の前にあるグラタンに似た団子状の食べ物にフォークを刺し、ボクのお口の前まで運んでくれる。
「ほらチィ、口開けろ。腹減ってるんだろ? 先ずは腹ごしらえだ。丁度いい感じに冷めてるからヤケドする心配もない」
「んふふっ、ボク赤ちゃんみたい♪」
身体がポカポカするし楽しくなってきたボクは言われるまま、そのマカロニに似たものをパクンと口に入れた。
ほんのりとまだ暖かいそれはトマトと挽肉のソースが掛かっていて絶妙に美味しい。
それに最初マカロニだと思ってたけど違った。もぐもぐ咀嚼したら微かにじゃがいもの味がする。
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