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第399話

煌騎はまず浴槽の前にボクを降ろすと床に座らせてシャワーのノズルを手に取り、温度調節をしてからお湯をボクの身体に掛け表面の汚れをさっと洗い流す。 それから上を向けという指示をしてボクがお顔を上向きにするのを待ち、そろそろと頭にもそのシャワーを当てた。 髪を十分に濡らしたあとは浴室の温度を下げないようシャワーを出したまま壁に戻し、ボクの後ろに腰を降ろして備え付けのボトルから液体を手のひらに少量取る。 そして頭皮を優しくマッサージしながらわしゃわしゃ洗い、髪は傷まないよう泡で包み込むように丁寧に洗ってくれた。 「わあぁっ、とってもいい匂いがするぅ!」 その甘い薔薇の香りがするシャンプーはリラックス効果があるのか、危うくうっとりとなすがままでいそうになる。――が、洗いっこがしたかったボクは目を瞑ったまま煌騎に催促した。 「あ、あ、煌騎っ、ボクも煌騎の髪洗いたい!」 「はは、残念だがそれはチィにはムリだ。髪を洗ってる時は目を開けていられないだろう?」 「むぅ、そだけどぉ……」 「今は大人しく俺に洗われてろ。洗い合いなら風呂に浸かった時にゆっくりさせてやる」 「ぶ~、絶対だよぉ?」 即座に却下されてしまったボクはちょっとだけ拗ねたけど、あとで彼の身体を洗わせてくれるというのでとりあえず髪を洗うのは我慢する。 でもそうなると途端に暇になった。 いつもは髪や身体を洗って貰っている間は手持ち無沙汰となるので、虎子ちゃんに貰ったアヒルのオモチャでボクは遊んでる。 今日はそれがないので仕方なく、足元に掛かるシャワーのお湯を手でパシャパシャと受けて遊び始めた。 もちろんその間も目は瞑ったままだ。 背後にいる煌騎はクスクス笑っているが気にしない。だってそれはボクをバカにしてるんじゃないってちゃんと知ってるから……。 「こらチィ、ジッとしてろ」 「う~? ボク、ジッとしてるよぉ?」 鼻歌を歌いながらお湯をパチャパチャしてると煌騎に怒られた。どうやら身体が勝手にユラユラ揺れていたらしい。 自覚がなかっただけにコテンと首を傾げれば、身体は頭の重みでそちらに傾く。あれれ?と思う間もなく上半身が床に倒れそうになり、寸でのところで彼に抱き留められた。 なんだろうコレ、フワフワと身体が宙に浮いてるような感覚だ……。

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