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第401話
向きを変えたいと言えば煌騎はボクの脇に手を差し込んで抱き上げ、彼と対面する形へと変えてくれた。
これで心置きなく洗う事ができる。
上機嫌で煌騎の肩に手を置くといつもやって貰っているように、優しく指を滑らせ首筋から耳の裏側に掛けてを丁寧に洗っていった。
ボクと違って煌騎の身体は面積があるのでとても洗い甲斐がある。真剣なお顔で洗っていると、対面からクスリと笑い声が漏れ聞こえてきた。
「なぁに、煌騎?」
「いや、人に洗って貰うのなんて何年ぶりだろなと思って……。ガキの頃はよく母さんに洗って貰っていたような気がするが、父さんと離婚して1度も会ってないからそれ以来……か」
昔を懐かしむように煌騎が言い、思い掛けず彼の過去話が聞けたボクは少し驚いたけど、話して貰えた事が素直に嬉しくて微笑んだ。
だから思い出に添うようにそっと尋ねる。
「そだったんだ、それは寂しかったね。じゃあ煌騎は会えるなら今でもお母さんに会いたい?」
「さぁ、どうだろな。もう母親を恋しがる年 齢 でもないし、顔も殆ど覚えていないからな……。それに少しも目が離せない奴がそばにいる。そいつはよそ見をする暇がないほどの巻き込まれ体質だから困る」
穏やかに笑ってそう言うと煌騎も徐ろにボクの身体へ指を這わせ出し、最後にニヤリと意地悪をする時のようなお顔をする。
瞬時に嫌な予感がしたが何事も経験値の足りないボクは逃げられる筈もなく、何やら良からぬ事を企んでしまった煌騎の手にいとも簡単に捕らえられた。
がっちりと片手で肩を掴まれ動けないよう捕捉されると、もう片方の手でやわやわと胸の周りを指で這わせられる。
普段と違い触れるか触れないかの微妙なタッチで触れてくる為、胸の小さな粒を掠める度にボクの身体は勝手にビクンと跳ねた。
そして何度か繰り返される内に両方の粒はツンと尖っていってしまい、彼の目の高さにあるそれは隠す事も叶わずに晒される。
せめてもの救いは浴槽いっぱいの泡が肌を包み込んでくれたが、残念なことに小さな粒は今日1日で弄られ過ぎて紅く色付いてしまってて上手く隠れきれていない。
直ぐに煌騎に見つけられ、クリクリと人差し指と親指の腹で摘まれた。
「いやんっ、やっ、煌騎ジャマしちゃダメッ!」
「……いや? 本当に?」
イヤイヤと首を振っても彼は指を緩めてくれず、悪いお顔になる。
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