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第403話

促されるままボクはその逞しい胸に手を這わせる。 よく見ると泡にまみれて肩や腕などにはところどころ紫に変色した治りかけの打ち身や、細かい切傷に擦り傷などたくさんの傷痕があった。 恐らくこれが本来あるべき男の身体なのだろうなとなんとなしに思う……。 ボクの身体にも似た古傷はあるにはあるが、それらは虐待されてできたものでやはり彼の傷痕とは違った。 比べるのもおこがましいが男らしさを感じる。 「いいな、煌騎の身体カッコイイ……」 「フッ、傷痕なんかかっこ悪いだけだろ。本当に格好いい男は傷など作らないだろうし、守りたい者を危険な目に合わせたりしない筈だ」 羨望の眼差しでその傷痕に指を這わせれば、彼は静かに首を横へと振る。それらは不名誉な傷ばかりで、ひとつも誇れるものはないという。 でも守りたい者の為に戦ってできた傷なら、それだけで価値は十分にあるし愛しさが込み上げた。自惚れじゃなければその『守りたい者』の中にはきっとボクの存在も含まれている……。 惹かれるように右肩にある、最近できたと思われる真新しい傷痕にそっとキスを落とした。 「煌騎はカッコイイよ。だってどんな時でも必ずボクを救ってくれる、最高のヒーローだもん」 「ヒーロー、か……。なんだかソレ擽ったいな」 照れたように笑うと彼はボクをそっと抱き締めお返しとでもいうように、髪を掻き上げておでこにチュッと音を立てて自分の唇を重ねる。 途端に煌騎のお顔が見たくなって見上げれば、彼と目が合いニッコリ微笑んでくれて唇にもチュッとキスをされた。 嬉しくなったボクは目の前の首元にゆっくりと腕を回し、もっと甘いのが欲しいと強請る。 「……チィ、あまり俺を煽るな。止められなくなる」 そう言いながらもチュッチュッと何度も音を立てて唇を重ね、角度を変え舌も絡ませ合いながら煌騎は困ったように眉根を下げた。 けど本当に困っているようには見えなかったから、ボクは珍しく我儘を続行して彼の蕩けるような甘い唇を貪る。 これはあのぶどうジュース(?)の所為なのだろうか?

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