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第5話
不覚にもその姿にドキッとしてしまった尋夢は、無意識に彼を見つめてしまう。
「お願いだから、逃げないでよ」
浴室ということもあり、翼の艶かしい声が、尋夢の脳内に心地よくエコーがかかりながら響く。
催眠術にでもかけられたかのように、動けなくなった尋夢の頬を撫でながら、翼は「いい子」と彼の耳元で囁くと、そのまま顔を近づけて再び舌を絡ませるキスを送る。
(唾液に混じって、翼の血の味がする……)
翼の体内で作り出されたものが、自分の体へと流れ込まれることに、尋夢は興奮をしていた。
その証拠に、下半身の前は芯がある硬さを持ち、後ろはヒクヒクと疼き始めている。
「尋くん、やっと素直になる勇気でた?」
尋夢の変化に気づいた翼は、静かに彼の下半身へと手を伸ばす。
しかしーー
「やめろっ!」
翼の指先が、尋夢のモノの先に触れた瞬間、彼は我に返り、その手を勢いよく自身の手で振り払った。
「お前とは、こういうこと……しない」
「なんで!! 尋くん俺のこと好ーー」
「うるさいっ!!」
2人の間に沈黙の時間が流れる。
「翼……今までのこととか、ちゃんと話すから。聞いて」
先に口を開いたのは、尋夢だった。
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