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とりあえずは落ち着いて、1ヶ月
「……、とりあえずさ。ありがとう。ありがとうってお礼は言わせてもらう。お礼は言うけど。」
「どういたしまして。太陽さんはドジっ子ですか?」
「主旨がそれるわ、主旨が。それに三十路にドジっ子ってかなり無理あるぞ、お前」
そうですか?と、不思議そうに首を傾げやがった齢 18の彩斗に、強めのデコピンをかましてやると、あいた!と額を押さえて眉間に皺を寄せる彩斗を無視 しつつ、不服ながらも自身の身体よりも一回りほど大きいと認めている少年の腕の中から、するりと抜け出す。
「助けて貰った人の態度じゃなーい」
「お前なぁ……少しは自分の行動を思い返して反省しろよ?それでもお礼は言ってやったろ。」
「えー……?せっかくファーストキス捧げたのにィ〜ッ痛った!?」
「なに言ってんだお前。」
可愛くないくせに可愛い子ぶった少年の言葉に、少しの動揺を自覚しつつも太陽は、その動揺すら握りしめた拳に込めて、またもや形の良い栗毛の頭へ落としてやりつつ、濡れた床を拭くために雑巾を取った。
「本当なのに……」
「はぁ?なにが」
「……僕、好きな人には初めてなんですよ〜?」
「ほんとかよ。」
「……。はは……っ、太陽さんは、嘘だと思います?」
「……、」
この日、夕食の準備をしていた際に足を滑らせて顔面を床に擦りかけた三十路男を救った少年は、すました顔で笑いながらファーストキスを捧げ、内心動揺していたおっさんにゲンコツをキメられたり、反省したか?と夜食を届けてきたおっさんに頭を撫でられ、衝動で押し倒し、ガチめの腹キックを受けて失神しかけたとかしなかったとか。
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