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子どもの本音
「夢……?ッ……、ここは……」
痛む後頭部を押さえつつ、朦朧としている意識と視界の中で、必死に状況の把握に努める。
確か、不良連中に殴られて、太陽さんみたいに強かったら反抗出来たろうなぁって漠然と考えてて、スマホを奪われて、奪われてから……太陽さんに──
そこまで思考が至って意識が途切れる瞬間の、自身の太陽なる人の歪んだ顔を思い出した。
「た、いようさ……!」
意識がしっかりとすれば同時に視界もクリアになった彩斗は立ち上がっては周りを見回し、倒れている物体の中で一つ、見覚えのある身体に倒れこむように近寄った。
「太陽さん……!?うそ、なんでここに……!」
ぐたりとした太陽を抱きしめた彩斗はそこまで言葉を発して、全ての状況を思い出した。
買いたいものがあったために、学校帰りにサンツーへ向かい、太陽が注意した連中に襲われ、殴られ続けた挙句に大切な人を危険に晒してしまったのだ。
「ど、どう、どうしよう……っ!なにするんだっけ……っ!」
「あ、やと……?」
「た、太陽さん……!?よか……、これ、一体……!」
「よか、た……、お前、無事……だな、よか……っ、」
腫れている顔でそう、太陽は彩斗に笑いかけ、今にも泣き出しそうな少年の頬をそっと撫でた。
「……っ」
「──……、」
"泣くんじゃねぇよ"……音としての形は成されては無いものの、そう動いた唇や表情で彩斗は、自身よりも余裕など無いのにも関わらず、未熟な己に喝を入れてくれている事を悟った。
「太陽さん、すき……すき、すき、すき……、すき、なんです……、本当に、大好きなんです……っ!貴方からしたら、たった18の子供 だけど……!僕なんかが言っても笑われちゃうけど……っ」
──……愛してる。
九年前から、あの日から、ずっと。
僕の ……、僕だけの太陽なる人 。
「お、れ……、」
「太陽さん……?太陽さん……!?痛……っ、いや、だ……、待……っ」
遠くで響く、サイレン音。
こちらに向かって来ている複数のサイレンを聞きながら、"逝かないで"と気を失って青白い顔をしている太陽を抱えるように抱きしめて……けれど、すでに限界を越していた彩斗自身も意識を飛ばしてしまった。
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