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Ⅰ そこは笑うトコロ②
悪魔の食事なんて、俺は知らない。
「この茶色いドロドロはなんだ?よもや泥を溶かしたのではあるまいな」
寮母さんを馬鹿にするなよ。
「味噌汁だよ」
俺たちの健康を考えて作ってくれる愛情たっぷりの料理は、とっても美味しいんだからな。
「うまいぞ!」
ほら♪
寮母さんのワカメと豆府 の味噌汁は絶品なんだ。
「下僕、汝 は料理の天才だ」
「当然!」
味噌汁、寮母さんが作ったんだけどね。
朝食の時間を過ぎたから、特別に厨房に入れてもらって俺は味噌汁を温めただけ。
チビッ子に目上の人への敬意を教えるため、この事実は伏せておこう。
「おぉう!」
なんだ、なんだ?
チビッ子が叫んだぞ。
今度は鮭か。卵焼きか。それとも味付け海苔?
「人間風情が原子レベルの分解と再構築の理論を理解するとは!」
チビッ子が小難しい事言って……
「あぁー、魔法少女か」
テレビアニメの魔法少女の変身シーンに歓喜したらしい。
なんだかんだ言っても、やっぱり子供だ。多少変わった感想ではあるが。
「1モルのアボガドロ定数を求めると、変身の原理は……」
「やかましい!」
訂正。だいぶ変わってる!
普通にアニメ見ろよ。子供らしく!
(やっぱり本当に悪魔なのかなぁ)
見た目は普通のチビッ子なんだけど。
やけに大人びているし。
俺の心臓、止まりかけたし。
……つか。
(なんで俺、チビッ子の面倒みてるんだ)
「我を育てなければ、汝は即死亡だからだ」
まるで心の中を呼んだかのようなタイミングだった。
「汝は我と契約した。見事我を育てた暁には、汝の願いを叶えよう」
契約?
願い?
なんの事?
「あのー、質問」
「はい、下僕」
挙手した俺をチビッ子が指す。
「契約とか、願いってなんの話?」
ムッ
眉間に皺を寄せて。チビッ子が不機嫌になった。
「願いを叶える条件に、我を育てると契約したではないか」
「えー。覚えてない」
「汝の都合など知らん。悪魔の契約に破棄はない」
「そんなぁ」
俺、すっごいややこしい事に巻き込まれてるよ~。
(俺の望んだ願いって、なに?)
酒の勢い……もといサバランの勢いで全く覚えてない。
「思い出せ。そこまで世話は焼かん」
悪魔だけにチビッ子冷たいな。
「まぁ、頑張れ。育て上げた暁には願いが叶う以外に追加報酬もある」
え、なになに?
食いついちゃうよ♪俺♪
フフンと、チビッ子が鼻を鳴らした。
「汝の魂を貰い受ける。人間風情が首座悪魔の栄誉に預かれる事を、誇りに思え」
………………それ、死亡フラグじゃない?
魂取られるって、死ぬって事だ!
なんなんだーッ、リスクしかないこの契約はーッ!!
「契約破棄する!」
「できんと言っただろう」
「それでも破棄!」
「破棄すれば、即死亡だ」
退路は絶たれた。
「汝のパートナーは既に決めてある」
パートナー?
なに、それ?
「二人の人間が協力して我を育てるのが、悪魔の契約の必須条項だ。優秀なパートナーと全力で我を育てろ」
なんなんだよー、勝手に決めて。
俺、育てない。
でも育てないと俺、死んでしまう~。
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