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Ⅱ 見せしめなら俺がなってやろう③
バタンッ
後ろ手にドアが閉められた。
「ここは?」
てっきり生徒会室に行くものだと思ってたけれど。
本棚には書籍がぎっしり詰まっている。埃を被ってカビ臭い。
使われていない資料室なのだろうか?
俺も初めて入った、この部屋……
そんな事よりも!
「ベルが誘拐されたんだっ」
「なに言ってるんだ?」
「本当なんだって!どこにもいない。お前だってベル見てないだろ」
「見ていないな」
ほら、な!
チビッ子探すぞ。
カチリ
ノブを回そうとした手に、手が覆い被さった。
「どこへ行くんだ?」
薄く笑んだ唇
「どこって。ベルを探しに……お前も行くだろ」
「行かないよ」
………え?
「一も俺と一緒にいるんだよ」
ドンっ
体躯を入れ替えられて、瞬く間に壁際に追いつめられた。
「ちょっ……なに言って」
「せっかくだから、俺とイイコトしよっか」
にこり
口許に浮かんだ微笑みに、ゾクリと冷たいものが走った。
「飛鳥っ」
「一……俺のものになってくれるだろ?」
秀麗な顔が近づいてくる。
嫌だ。
怖いっ。
天使の微笑みは、これ程までに威圧と恐怖を与えるものだったのか。
………違う。
天使の微笑みじゃないから気味悪いんだ。
(飛鳥は俺を、一なんて呼ばない)
だって俺たちは相性最悪だから♠
「お前は飛鳥じゃないッ」
ドンッ
飛鳥の顔した飛鳥を突き飛ばす。
……筈が。
「抵抗されると萌えるよ」
(痛いッ)
床に押し倒されて、手首を頭上に吊るされた。
「可愛いよ、一……」
熱い吐息が耳朶にかかった。
「やめっ」
「やめると思うか?さっさとお前も感じろよ」
手が股間を撫でる。
気持ち悪い。暴れるがビクともしない。着衣の下の柔らかい雄を揉む手が、ジッパーを下ろしにかかった。
「離せェーッ!」
………呼んでも誰も来ない。
今日は日曜日
ここは使われていない第2棟資料室
なのに
「大和ォ!そこを動くなッ!」
動きたくたって動けない。
(でも、なんで?)
聲 が返ってきたのだろう?
バリリィィーンッ
潮風が鼻孔をついた。
ふわり
埃臭い室内に青嵐が踊った。
ギラギラ
散乱したガラス片が陽光を反射する。
粉々に開け放たれた窓
ふわり
カーテンが舞って
俺に覆い被さる影が蹴り飛ばされた。
自由を取り戻した俺だけど、立ち上がる事ができない。
情けなくも腰が抜けてしまって……
グイッと腕を引っ張られた。
上半身だけ起こされて
気づいたら……
あいつが跪いている。
俺の目の前で
体温の熱に、俺は吸い寄せられた。
ぎゅうっと、強く………
飛鳥の腕が、俺の体を抱きしめた。
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