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手紙

前にあった事件が飲酒運転では無いと分かったあの日から数日。歩叶君にはどれだけ触られても嫌では無くなっていた。相変わらず美晴先生達には手袋越しでの接触しか無理なのに… そして最近はすごく胸の痛みと動悸が増した。美晴先生に病院に行ったほうがいいんじゃないのかと、聞いてみたものの、そのうち治るよの一点張りで他には何も言ってくれなかった。 それから更に数日経ったある日。学校から帰って来てポストを覗くと沢山の書類の中に一つだけ封筒が入っていた。宛先には、   「彼方君へ…広夢君の友人より…だってさ」 隣から突然綺麗な声色が聞こえ、見上げると歩叶君が不思議そうに手紙を覗きながら立っていた。 「で、何なの?その手紙は?」 ドキッ 手紙を指差しながら首をかしげているだけなのになぜだか色っぽい。こんなふうな歩叶君を見ると胸の動悸が酷くなる。   「部屋で、読んでみようか…」

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