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触れたいよ

彼方の涙を拭おうと手を差し伸べるがそれすらも払われてしまう。それだけの事を俺はしてしまったんだ。 「俺の事…嫌い?」 そう聞くと彼方は苦しそうに答えた。 「僕、歩叶君が……嫌い……だから、もう近づかないで…触らないで…執事もやめて…もう、これから僕に関わらないで…もう…」 「っ!」 それ以上聞きたくなくて彼方の口を俺の口で塞いだ。キスをした途端に目を見開いて何やら苦しそうにしている。 「ウェッ!…っ…」 するといきなり俺を突き放して吐き出した。口からは次々に食べたものが吐き出されていく。心が痛い。吐かれてしまったらもう俺にはどうしようもできない。辞めるしかないのかな… 「彼方」 聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。 「こんなことになったのは全て僕のせいだ…全てを話すよ」 そう言ったのは彼方のお父さん、広夢さんだった。

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