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苦しい
歩叶君に酷いことをたくさん言ったあの日から数日が経った。あの事件は父さんの力によってあいつは無期懲役とくだされた。これで僕は元に戻ると思った。でもそんなのは大間違いで逆に酷くなっていくばっかだった。
「うっ…ウェッ!…気持ち悪い…」
「彼方…」
「触るなって言ったじゃん!」
隣で理人が何もかも吐いてしまっている僕を心配してくれて背中を擦ろうとしてくれているのに、その手を近くにあった消毒液のボトルを投げつけて払う。もちろん理人の手にはしっかりと手袋が着いている。
そう。あの日から僕の精神が壊れ始めていた。食べ物は喉を通らず、一気に呑み込んでも吐き出してしまう。その証拠に僕の腕には点滴の後に貼る絆創膏が何枚も貼り付けてある。
そして、潔癖症の重度は前よりも増し、今では相手が、手袋や消毒液を着けていても触られると気持ち悪いと感じてしまう。今のように。理人は僕のためを思ってやってくれている事なのに全否定しているようで自分が1番「うざい」。
手を洗ったり体を洗ったりする頻度も増えて体中があかぎれで埋まっている。酷いときにはシャツから血が滲み出る程だった。
夜なんかはもっと酷かった。暗い中で布団に入るとあのときの感覚が一気に戻ってきて吐き気を伴う。睡眠薬や精神安定剤を呑んでただひたすら目を瞑りただただ明日が来るのを待つだけだった。
1番苦しかったのは歩叶君に会えない事だった。自分から突き放したのに心が痛くてどんどん好きという感情が溢れてくる。歩叶君にならどれだけ触られてもいい。……ううん…歩叶君が飽きるまで僕に触って欲しい。
歩叶君も同じ事を考えてくれてたら嬉しいのにな…
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